海外メディアは、宮崎駿監督の「引退」をどう報じたか?

 イタリアで開催中のベネチア国際映画祭で1日、コンペティション部門に参加している「風立ちぬ」を最後に宮崎駿監督が引退することが明らかになった。スタジオジブリの星野社長は記者会見で、宮崎監督の「引退」を発表しながらも、詳細は明らかにしなかった。宮崎監督は、79年に「ルパン三世 カリオストロの城」で監督デビューして以来、計11本の長編映画を手掛けている。

 同監督の最後の長編映画になる「風立ちぬ」は、6週間で興収8千万ドル(約80億円)突破し、大ヒットとなっている。

「風立ちぬ」は、ベネチア国際映画祭以外にも、ニューヨーク国際映画祭とトロント国際映画祭で出品が決定しており、今月公式上映される予定。また、「風立ちぬ」の配給権を獲得した米ウォルト・ディズニーは先週、公開日を未定にしつつも全米配給するとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

 なお、宮崎駿監督はベネチア国際映画祭に参加しておらず、来週「引退」について都内で記者会見する予定。

【「風立ちぬ」 宮崎監督の思いとは】
 ニューヨーク・タイムズ紙は、2011年のインタビューを引き合いに出しており、この映画の制作理由を伝えている。

「風立ちぬ」は、旧日本海軍の戦闘機「ゼロ戦」などを設計した航空技術者、堀越次郎氏をモデルにした作品。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「なぜ戦争の武器を作った男の物語を作るのか」という質問に対する、宮崎監督の答を紹介した。宮崎監督は、当初は彼らの言うことはもっともだと思ったが、ある日、「何か美しいものを作ることだけが、私の望みだった」という堀越氏のささやきが聞こえ、その時テーマが見つかっていたことを悟ったのだという。

【「風立ちぬ」 物議を醸す】
 「ゼロ戦」開発をモチーフとした映画「風立ちぬ」は、戦争やナショナリズムの危険性をめぐって、前代未聞の議論を引き起こしているとロイターは取り上げている。

「風立ちぬ」に対し、日本が再び軍国主義に向かっているかもしれないという警告として捉えるコメンテーターもいる。また、韓国のネットユーザーは、旧日本軍のシンボルである「ゼロ戦」の考案者を「ロマンチックに描写した」として非難しているとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

 しかしまた、宮崎監督は映画版の企画書の中で「戦争の賛否でなく、自分の夢に邁進する人物を描きたい」旨を書いている。さらに、小冊子「熱風」で、安倍首相の憲法改正の取り組みに異議を唱えている。

Text by NewSphere 編集部