“日本はTPPから外れるべき” 農産物市場開放は必須、米議員団が圧力

 TPP交渉の早期合意のために、ポール・ライアン米下院歳入委員長をトップとする7名の米議員団が訪日中だ。アメリカはTPPの早期合意に向けての努力を進めているが、その努力に注意すべき点があると、ワシントン・ポスト紙は警告する。

◆オバマ大統領の最優先課題の1つ
 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、オバマ大統領に貿易促進権限(TPA)が付与されるので、日本が思い切った譲歩を示しても、共和党が優勢の議会で承認を拒否させるという心配をする必要はもうない、と述べたライアン氏の言葉を引用して、アメリカが早期合意のための努力を進めていることを伝えた。

 また、別の議員団のメンバーで、通商問題における下院での主要なメンバーの1人である民主党のグレゴリー・ミークス議員の発言「(TPPは)オバマ大統領の最優先課題の1つだ」を引用して、オバマ政権がTPP交渉を重要視していることを伝えた。

 日本側も早期合意を目指しており、甘利明TPP担当相が「交渉のスケジュール感は、アメリカ側も、大体、私がイメージしているような感じだ。だから、それに折り合うように取り組んでいきたい」と、ライアン氏との会談後に述べたことを伝えている。

◆日本とカナダは市場開放ができないなら除外
 しかしながらロイターは、甘利氏が、これまで言及していた「春の早い時期」の閣僚級会合実施・全体合意については、「厳しいスケジュールになってきている」との見解を示したことを伝えている。

 その理由をWSJ紙はこう伝えている。安倍首相が、農業の市場開放に反対する国内からの反発を恐れる与党議員からの抵抗に直面しているのだ。TPP交渉は、日本、カナダなどによる農産物の市場開放への反対で、協議が停滞している。ライアン氏は今月、日本とカナダが大胆な市場開放ができない場合は、両国は外されるべきだと示唆している(WSJ)。

 しかし、今回の訪日では、ライアン氏は一切の批判を控え(WSJ)、「TPA(貿易促進権限)は最後の詰めの作業が行われている。交渉が終われば、非常に早い進展が期待できる。春にもだ」と述べ(ロイター)、日本とのTPP早期合意へ前向きな姿勢を見せた。

◆TPPに通過操作への規制は入れるべきではない
 ロイターの解説では、貿易促進権限(TPA)がオバマ政権に付与されると、オバマ政権下の行政府が貿易協定の交渉を行う。いったん協定が締結された後は、議会によって変更することはできない。

 このことに関して、米議会の動きを牽制しているのがワシントン・ポスト(WP)紙だ。議会は、TPA法案に「通過操作」対策を含めるかどうかを検討しているのだ。

 日本の円安誘導政策がアメリカの貿易赤字拡大の主要因となっているいう見方が広まり、TPPに為替操作を禁止する条項を盛り込むべきという声が米議会で強まっているのだ。

 しかし、WP紙は、5年前にオバマ大統領が2015年までに貿易額を倍増させるとして、連邦準備銀行が大幅なドル安政策を行っていたことを指摘する。

 同紙は、TPA法案に通過操作への規制を入れることは、毒を注ぎ込むに等しいことであり、アメリカに地政学的・経済的利益をもたらすようなTPP全体を潰しかねないと警告している。

Text by NewSphere 編集部