LNGが日本の電力の将来を担う? 再生可能エネルギーの可能性と合わせ、海外報道

 日本の電力事情が、曲がり角に差し掛かっているようだ。2011年3月の福島第1原発の事故以来、日本の電力供給は原子力からの脱却を目指し、様々な方法を試している。しかしながら、その方向性は未だ定まらず、海外メディアも不確定要素が多いとの見方をしている。

◆原子力発電をめぐる不確定要素
 日本政府は数年以内の原子力発電所再稼働を計画している。しかし、ウェブ誌『ディプロマット』によると、これは不確定要素が大きいようだ。国民の原子力に対する不安を払しょくできていないことがその第1の理由だ。

 さらに御嶽山の噴火を予知できなかったことで、高い技術を持つ日本の地震等の予知システムも完全ではないことが分かった。東大教授で地震学者の藤井敏嗣氏はロイターに「東北の地震がさらに大規模な火山噴火を引き起こす可能性もある。2011年の地震が日本の地下を激しく揺さぶり、火山は活発化している。今後はさらに大規模な噴火が起きるかもしれない」と語った。同誌はこれらを引用し、日本の地質が原子力発電所再稼働を困難にしているとした。

◆再生可能エネルギーをめぐる諸事情
 次の選択肢として考えられるのが、太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギーである。福島の事故後、政府は電力事業に競争原理を導入しようとした。安倍政権は企業の電力事業への参入を推進する予定であったが、その効果が弱まっている。当初の計画では、電力事業に名乗りを上げた企業に等しいアクセス権を与え、電力の固定価格買い取り制度を導入、送電網の管理も電力広域機関を設置、全国統一したシステムの下に行うというものであった。しかし、この計画は電力会社の反対、送電網システムの問題(使用電圧が日本の東西で異なる)などの困難な課題に直面している(ウェブ誌『ディプロマット』、ロイター)。

◆液化天然ガス(LNG)は救世主となるか
 最近一躍脚光を浴びてきたのが、LNGである。ウェブ誌『ディプロマット』は、LNGについて、「すでに日本のエネルギーの多くを占めているが、これを増やすことで、石油の輸入が減少、中東への依存を減らすことが可能だ。日本はLNGの需要の40%をオーストラリアから、残りを米国・カナダから輸入する計画だ。低コストで、安定的な供給を目指している」とLNGの可能性を示唆している。

 カナダのバンクーバー・サン紙によると現在、日本は発電の48%をLNGに頼り、ここ2年間で20%増加している。エネルギー経済研究所理事の小山堅氏はLNGについて「コストは原子力よりも高いが、毎日の生活に必要な電力量を賄うのに最適なエネルギー資源」とし、「日本は供給量だけでなく、価格も保証できるLNGの供給先の確保が必要だ。政府は価格競争によってこれらを保証しようとしている」と、LNGによる電力事情の改善に期待しているようだ(バンクーバー・サン紙)。

 しかし一方で、同紙は経団連環境本部長谷川雅巳主幹の「原子力発電再稼働の延期により電力料金が値上がりし、企業の負担は増している。その結果、製品が値上がりし、輸出においても日本製品は競争力を失っている」との厳しい批評も掲載している。

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Text by NewSphere 編集部