具体案なき成長戦略、「針」「ノミ」…皮肉な比喩で海外紙が批判
アベノミクスの「第3の矢」、「日本再興戦略」の改訂素案は、27日の閣議で正式決定が予定されている。さらに数日前倒しが図られているとの報道もある。しかし海外紙は、一挙に核心を突けない改革進捗にもどかしく感じてもいるようだ。
【矢ではなくヤブ鍼灸師の千本バリ】
フィナンシャル・タイムズ紙は、「構造改革となると日本の首相は、ウィリアム・テルのように1発でリンゴを割るとはいかない。むしろ彼は、1本か2本が実際に効くかもしれないと期待して千のハリで政治の体を串刺しにする、見習い鍼灸師に似ている」と喩えた。そのハリの大部分は効果がなく、一部は有効、一部は逆に有害とのことだ。ただ、有効なものがあることを強調はしている。
有効なものとしては、取締役の選任・訓練方針や女性の昇進状況についての説明責任を含むコーポレートガバナンス規定、あるいは年金資金運用基金の資産運用先をそうしたガバナンス面で高評価なJPX日経400銘柄企業に切り替えるなど、要するに企業に株主の扱いを改善させることだという。
一方、労働改革や農業改革については、効果は疑問視されている。労働者の解雇を簡単化するには現状、非正規労働者が多すぎるという問題があり、女性の労働参入促進というハリについても、「雇用された女性の課税阻害要因をなくす、と書いた方が効果があるだろう」と、その本音を皮肉っている。また農業自由化において最も強力なハリであるTPPは、オバマ米大統領が議会でファストトラック権限をもらって来られればの話だという。
【ドリルではなくノミ】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙のほうは、失業率の低さなどの日本の「社会契約」的慣行を捨ててでも、労働や移民の規制緩和を断行すべきだとの意見だ。しかし同紙もまた、安倍首相がダボス会議で「私は喜んで(既得権益を砕く)ドリルの歯の役を果たします」などと発言していたことを引用して、「ドリルの歯などではなく彫刻家のノミを使っている」と、戦略案の威力不足を皮肉った。
例えば企業減税については、「30%以下」の実効税率に引き下げるとされているだけで、具体的な新しいレートも、時期も、財源も示していない。労働改革や農業改革は全国的なものでなく経済特区頼みで、何か効果があるのかどうか判明するのにも数ヶ月から数年かかるだろうという。
【カジノ合法化にも期待する外国投資家】
16日に戦略案が政府産業競争力会議を通過した時点でCNBCは、政権の動きが、投資家からの期待感情という点で重要だと報じていた。企業減税についても「私たちが眼にしたいものであり、理にかなったものであります」などと期待の声が伝えられているし、カジノ合法化案についても言及されている。
同時に、改革が国会を通過するのにどれだけ時間がかかるかについて、不安視する声もある。カジノ法案については日本では廃案要望も出ているが、これは「待望の議会議論を押し戻すもの」であり、香港の投資会社の担当者は「私たちの信念は、彼ら〔議員]が正しい選択をするということです。しかしこれは日本のことなので、我慢しなければなりません」などと語っているという。