安倍政権 2015年以降法人税引き下げへ…“大企業重視?”海外メディアは懐疑的な見方

 安倍首相は成長戦略の重要なカギとなる税制改革の一環として、法人税の引き下げを提案、2015年以降の施行が決まりそうだ。一方で詳細は明確でなく、海外メディアは今後も議論が続くと見ている。

【法人税値下げ】
 安倍首相は、法人税の見直しによって、投資を復活させ国内生産を維持する狙いだ。最大の反対勢力であった財務省、自民党内税制調査会が、収益の新たな財源確保ができるのであれば応じるとしたことで、2015年以降の実施が本格化した。

 フィナンシャル・タイムズ紙によれば、日本の35%という税率は国際的な基準でも高く、経済協力開発機構(OECD)の国々の中でもアメリカに次ぐ2位という高さだ。企業は競合性を欠く要因であると主張している。株式会社東芝の佐々木則夫会長は、「日本の電子機器メーカーは特に負担が大きく、海外の競合に比べて2倍近くの税金を払っている」、と話す。

 経営指導者たちは、今後数年のうちに30%以下までの削減、最終的には25%までの削減を主張している。3日に就任した経団連の榊原会長も、OECDの平均である25%を最終目的にするべきだとの見方を示した。

【投資の回復となるか】
 榊原会長は、「法人税改革は外資系企業の投資を増やすために不可欠」、との見方を示している。多くの企業は現金を確保しており負債も少ないため、投資が増えていく可能性はある。「重要なのは、企業経営者たちが考え方を変えられるかどうか」だと、麻生財務大臣は指摘する。「企業が利益を手放さなければ、減税しても何も変わらない」、との懸念を示した。また政府関係者を含む懐疑派は、大企業はすでに現金を確保しているので、減税によって投資が復活する見込みは低いと見ている、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じた。

 フィナンシャル・タイムズ紙によると、政府関係者の中には、成長を促進し国内外の企業の日本への投資を増やすためには、単純に法人税を引き下げるべきとする声もある。甘利経済大臣は、投資を増やすためには「投資を判断する人々に魅力的な改革でなければならない」、と指摘する。一方で、消費増税を施行している政府にとって、現時点での単純な税の引き下げは困難だ。青山学院大学の法学者、三木義一氏は、「国民は、年金や医療福祉制度のためと納得して消費増税を受け入れた。法人税の引き下げは矛盾する」、との見解を示した。

【問題点への対応は】
 減税が施行されれば、失うことになる税収をいかにして補うのかが問題になる。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、経団連は減税で投資が増えることによって、減収分を補えるとしている。一方で国際通貨基金(IMF)は先週、法人税の削減は成長を促すものの、「税収減を埋め合わせるほどにはならない」との見方を示した。

 また、法人税を払っているのは実に日本企業の10社に1社という現状にどう対処していくのか。フィナンシャル・タイムズ紙は、減税の賛成派、反対派ともに法人税制度の見直しが遅れていることを認めている、と報じた。現在法人税は、収益の多い一握りの大企業しか払っておらず、ほとんどの企業が収益減を報告し法人税を払っていないという。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、小企業の負担を増やす制度改革は自民党支持者からの反発を招く可能性が高いと見ている。議員の中には、政府が大企業を重視し小企業と消費者を犠牲にしていると見られることを懸念する声が上がっているという。安倍首相の税制改革では他にも、今後10%までの消費増税、社会での女性の活躍を見据えた扶養者控除の廃止など、議論が続いている。

図で読み解く – 「アベノミクス」のこれまで・これから (中公新書ラクレ) [amazon]

Text by NewSphere 編集部