配偶者控除の廃止で女性のフルタイム労働者は増える? 海外紙は“アベノミクス加速”と評価

 安倍首相は、経済社会における女性の活躍を“アベノミクス”成長戦略の最重要事項とした。一方で日本社会における女性労働者の実状は、世界でも大きく遅れをとっている。海外メディアは日本が直面する課題を論じた。

【日本社会における女性労働の実状】
 英エコノミスト誌では、日本人女性は世界でも高水準の教育を受けている一方、卒業と同時に経済面においての可能性は激減すると論じている。ゴールドマン・サックスのキャシー松井汎アジア投資調査統括部長によると、日本人女性の労働力への参加は73%で、フィンランドの96%、アメリカの85%に比較すると低いことがわかる。第一子の出産で実に70%が10年以上仕事を辞め、そのほとんどが復職していない。

 また日本株式会社の頂点には、ガラスの天井ならぬ、不透明な“竹の天井”と呼ばれる厚い壁があり、女性の高地位への進出を阻んでいるという。マッキンゼー調査によると、2011年、幹部レベルの経営者のうち女性は1%に過ぎなかった。

 総務省の発表によると、女性雇用者数は昨年47万人増加して2700万人となり、1991年以降最大の増加となった。「夫は外で働き妻は家庭を守る、という伝統的な家族観は崩れ去った」と、三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉理事は米ブルームバーグに語った。労働力は減少しており、外国人か女性に頼らなければ労働力が不足してしまう、と指摘する。

【女性労働力の拡大における期待と課題】
 エコノミスト誌は、女性労働者を現在の男性労働者の規模にまで増やすことで、800万人の労働力を追加することができると報じた。ゴールドマン・サックス証券は、結果として国内総生産(GDP)を最大15%引き上げると予想している。また充実した育児サービスの提供と、企業倫理の緩和で男女ともに労働時間を減らすことによって、子どもの数が増える可能性があると、エコノミスト誌は指摘した。

 キャシー松井氏は、「政府が本気で女性労働者を増やしたいのであれば、女性の給与を引き下げる要因となっている税金制度を廃止すれば良い」と語る。現制度では、妻の収入が限度額以内であれば夫は税金控除が受けられ、妻は保険料を払わずに年金を受け取ることができる。一方でエコノミスト誌は、制度の改革によって自民党は多くの主婦やその夫の支持を失うことになる、と指摘する。

 現時点まで首相の動きは思わしくない、と同紙はみている。産休の長期化は企業側、フェミニスト側双方からの批判を受けている。そもそも2020年までに女性の指導者を増やすという目標は2003年当時の小泉総理が掲げた目標で、託児所の問題も当時に遡る。残り6年で目標達成できる見通しは立っていない。

【配偶者控除の廃止による展望】
 キャシー松井氏によると、控除廃止は長期的に見て利益となる。「(制度の廃止によって)特定の家庭が失った保証は、妻が家庭の外で働くことによってそれまでの保証以上の収入を得ることで補われるべき」と文書で指摘した。野村証券チーフエコノミスト木下智夫氏も、控除の壁を取り払うことで女性のフルタイム労働者が増える可能性があると考える。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの尾畠未輝氏は、配偶者控除を廃止することは安倍首相の目指す持続的成長を長期的に支えることになるという見方を示した。「妻が働くと家事サービス、外食、女性服や交際費などの消費が増える。アベノミクスが目指す好循環をもたらす」と分析した。

LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲(シェリル・サンドバーグ) [amazon]

Text by NewSphere 編集部