日豪EPA合意、TPP進展か? それでも米国が否定的な理由とは
日本とオーストラリアは7日、経済連携協定(EPA)交渉で大筋において合意したことを発表した。主要なところでは、オーストラリア産牛肉の輸入関税率は38.5%から約半分の19.5%となり、代わりに日本製自動車の輸入関税が撤廃される見通しである。
【TPPの追い風となるか】
オーストラリアのアボット首相は「日本とオーストラリアは民主主義と自由な世界を求める意志を共にする仲間」と発言し、両国の強い絆をアピールした、とブルームバーグは報じている。両政府のEPA交渉は、安倍首相が前回首相を務めていた2007年から行われている。
オーストラリアとの関税削減が合意した以上、TPPが進まなければ日本市場でアメリカにとって不利な差が生じてしまう。アメリカのオバマ大統領来日を2週間後に控えていることもあり、今回の合意によって、暗礁に乗り上げている環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が軌道に乗るよう両政府とも期待している、と同誌は報じている。
【否定的なアメリカの見解】
しかしアメリカの反応はそこまで好ましくないらしい。フィナンシャル・タイムズ紙によると、フロマン米通商代表はこの合意を「まったくもって話にならない」と一蹴したという。
同紙によると、輸入牛肉の38.5%という関税はあくまで「段階的に」削減されるに過ぎない、とアメリカは批判する。それも、半分の19.5%となるのは冷凍肉で、冷蔵肉については15年かけてやっと23.5%。この内容について米政府は「TPPの求めるレベルからかけ離れた妥協案」と侮蔑の目で見ているという。
しかし、これでも安倍首相に取ってはものすごい進歩というのが日本側の見解、と同紙は伝える。「国会や農業・畜産業関係者からのプレッシャーに対し、政府はずっと議会決議に従うと言ってきたのに、ある意味その発言をひっくり返したようなもの。TPPでも同様のことが起こりうるかもしれない」と元農水官僚で現キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁氏は同紙に語っている。
それでも、関税全撤廃を求め米政府に働きかける筋にとっては、歓迎できる結果ではなかったらしい。特に牛肉に関する取り決めは、アメリカの事業者にとって今後の不安要素となったようで、結局は大きな関税の壁が残されたままと感じているようだ、と同紙は報じている。
【現実を見るべきでは?】
これに対しウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「みんなそろそろ現実的な着地点を見据えるべき」と語る在日オーストラリア・ニュージーランド商工会議所のメラニー・ブロック氏の言葉を伝えている。
ブロック氏はこの取り決めが、TPPの最終的なゴールである関税全撤廃に向けた「第一歩」となるであろうことを強調。アメリカについても「あまり無理に事を進めようとして、結局何も得られないという結果にならないよう注意すべきでは」との見解を示している。
同紙は、日本も同様に今回の合意が米政府の姿勢を軟化させることを望んでいると報じ、「この合意がTPP交渉の早期妥結実現につながるものと信じている」と語る日本商工会議所の三村明夫会頭のコメントを伝えている。
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