日米欧、レアアース規制の中国に勝訴 “TPPに追い風”海外紙分析の理由とは
26日、世界貿易機関(WTO)紛争解決制度(DSB)は、中国がレアアース(希土類)およびタングステン、モリブデンの輸出に課している関税や割当量制限を、不当と認める裁定を下した。2012年6月に日・米・EUが共同提訴していた件であり、DSB自体もその裁定のために設置を要求されたものだ。ただし、過去の実績を要する割当量制限は中国で操業する外資企業への差別だとの訴えについては、認められなかった。
中国は60日以内に裁定を受け入れるか控訴することになる。中国商務部は現在、裁定内容を評価中であるという。フィナンシャル・タイムズ紙は、「レアアースの件は水曜日の判決で片付きそうにはない」と評している。
【中国が独占する戦略資源】
レアアースは様々な工業製品のほか、鉄鋼生産にも必要な原料であり、とりわけ軍用製品にも使われることから、戦略資源として重視されている。
しかし、産出は中国に偏っており、備蓄量は世界全体の約23%、供給は世界の市場需要の90%以上を占めるという。アメリカ、オーストラリア、太平洋海底などで鉱床開発の努力が進められてはいるが、現状、中国の出し渋りにより、各国の産業界は原料コスト高騰を強いられ、相対的に中国企業にとっては不当な優遇となっているというのが、提訴側の言い分であった。
一方中国は、資源節約および環境保護の観点から必要な規制であって、「WTOが推進する、持続可能な開発という目的と完全に一致しており、資源、環境、人類の協調発展に貢献する」と主張していた。しかしDSBは「中国の輸出割当は、省エネよりも産業政策目標を達成すべく設計されたものと認められる」として、中国の主張を却下した。
【アメリカにとってはTPPへの追い風?】
各紙は、2011年にも同様に、ボーキサイト、マグネシウム、亜鉛などの輸出制限について、中国に不利な裁定が出ていることを指摘する。中国は、実際その裁定に従っている。そのためフィナンシャル紙は、今回の判決は、中国とアメリカとの「もっと長く広範な闘い」にも影響しそうであるし、「他の国々が原材料の輸出制限を課したり維持したりする」ことも難しくなる可能性があると論じた。
米産業界や有力議員は今回の裁定を歓迎しているという。同紙は、こうした勝利が増えればEUとの貿易協定交渉、あるいはTPPにおいて、オバマ政権への追い風になると示唆している。
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