消費税増税に76%が不安も、日銀総裁は“一時的な減速”と強気 その理由とは?
4月1日から、消費税率が8%に引き上げられる。増税を控え、共同通信社は22、23日に全国電話世論調査を実施。それによると、消費税増税後の日本経済の先行きに不安を感じているとの回答は、「ある程度」を含め、計76.5%にのぼったという。感じていない、としたのは計22.4%だった。
一方、黒田日銀総裁は21日にロンドンで講演し、増税で経済が減速しても一時的なものであり、来春ごろには予定通り2%のインフレ目標を達成できる、と従来の主張を繰り返した。ウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じた。
日銀としては、もし経済が軌道を逸れるなら「何のためらいもなく」さらに緩和政策を強化するつもりであり、また逆にバブルが発生する兆候もないという。
【実質デフレに苦しむ国民】
黒田総裁は、「物価が毎年2%程度増加する状況というのが何ら特殊なものではないのだと、人々を説得しなければなりません」と述べた。
しかしフィナンシャル・タイムズ紙は、日本の現在のインフレ率1.4%はアメリカやドイツと大差ないものの、昇給のペースより早く、窮乏感につながっていると指摘する。さらにインフレの内訳も、商品が2.2%インフレしているのに対してサービスは0.5%にとどまっており、需要増ではなく、単に円安による購買力低下のせいである証拠だという。
【駆け込み需要後は年率3.7%のマイナス成長】
同紙は、このような状況での増税を不安視する。民間予想によると、GDPは1~3月期には駆け込み需要で4.1%成長となるが、増税後の4~6月期には一転してマイナス3.7%と見積もられるという。
消費税増税には批判的な浜田宏一内閣官房参与は、昨年10~12月期の成長率0.7%は潜在成長率とほぼ一致しており、もはや余力はないとの考えである。日銀が追加緩和は今のところ不要との考えを示しているため、日銀が動くとすれば4月~6月期の予備的GDPデータが公表される9月か、成長・インフレ見通しが更新される10月と見る意見もあるが、浜田氏は増税後1~2ヶ月以内に行動が必要になる可能性も示唆する。
また同紙は、2017年まで商品の税抜価格表示が認められていることについて、たとえば現在税込550円の商品が572円に上がると言うのに、それを税抜で530円と表示することは「ズル」「ほとんど消費者への侮辱」だとの、専門家の批判を伝えている。
【財政再建のタイムリミットは】
同紙も、増税のタイミングはともかく、財政再建による政府債務削減の必要性については、「疑う人は少ない」と認めている。
ブルームバーグは増税より構造改革の必要性を強調しているが、34エコノミストへの調査の結果、「持続可能な道」へと経済を立て直せるタイムリミットまであと4年以下という意見が11人、まだ10年以上あるという意見が7人、すでに手遅れとする意見も5人あった。また、将来的に日銀が緩和をやめる際の影響も不安視されている。
一方、「経済が弱くて消費税を上げられず、社会保障費や債務費を相殺できずに、日本の債務がGDPの300%に達したとしても」、政府と日銀の政策行動によって「財政懸念やパニック売りが引き起こす金利高騰のリスク」は抑えることができる、と楽観視する意見もある。ブルームバーグは黒田総裁が2月12日、日本の財政の持続可能性を疑うことは債券利回りを押し上げる、と警告していることにも触れている。
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