日中韓、FTA交渉開始 関係冷え込む中、“会談だけでも前進”と海外紙は評価
日本、中国、韓国の三国間の自由貿易協定(FTA)の締結を目指して、4回目となる交渉会合が、4日、ソウルで始まった。
【自由貿易協定(FTA)のメリットとは?】
FTAは、特定の国や地域との間で、物品の貿易にかかる関税や、流通や運輸、金融など、サービス産業での外国企業への規制を、削減・撤廃する取り決めだ。海外との貿易が行いやすくなるほか、海外での企業活動への投資が、これによって増大すると期待されている。
国際的な自由貿易のルール作りをする機関としては、現在159ヶ国が加盟する世界貿易機関(WTO)がある。また、日本は現在、アメリカなど12ヶ国による、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の協議にも参加している。しかし、参加国の多いこれらの協議では、締結までに時間がかかるため、地域での自由貿易の実現に向けて、よりスピーディーなFTAの意義が増している。
【やっぱり深い、日中韓の経済的結び付き】
日中韓でFTAが締結されれば、GDPにして世界全体の20%、貿易高にして17.5%に及ぶ、巨大な自由貿易地域が誕生することになる。現在、日中・日韓関係は、政治的には冷え切っているが、共通の経済的利益のためには、それを脇にのけておくこともいとわないようだ、とウェブ誌『ディプロマット』は述べる。このような状況下、FTA協議が継続しているということだけで、外交上の勝利に相当する、とも語る。
日中韓の経済的結び付きはそれほど深い。同誌は、WTOの資料からデータを引用している。それによると、2012年、
・日本にとって:中国は最大の貿易相手国。貿易総額は約3320億ドル(当時のレートで約26兆5400億円)。韓国は第4位。貿易総額は約1030億ドル(同・約8兆1400億円)。
・中国にとって:日本は第3位の貿易相手国。韓国は第4位。貿易総額は2570億ドル。
・韓国にとって:中国は最大の貿易相手国。日本は第4位。
であった。
韓国側首席代表の禹泰熙(ウ・テヒ)韓国産業通商資源部通商交渉室長は、「日中韓のFTAは、自国の経済成長を促すだろうと、3ヶ国とも十分に認識しています」と聯合ニュースに語ったという。同誌はまた、世界経済の成長において、東アジアと環太平洋諸国が、今後もしばらく中心地の一つであり続ける、との世界銀行の予測を伝えている。
【スムーズにはいかない懸念材料も】
しかしながら、韓国産業通商資源部の尹相直(ユン・サンジク)長官は、“今回の会合で大きな進展は起こりそうもない”と語った、とビジネス・コリア誌は報じている。「交渉はいつもスムーズに進むとは限りません。ある場合には、主導権争いに加わらなければならない」と尹長官は3日、記者に語ったという。しかし、「(目に見える)進展がないからといって、交渉が進んでいない、というわけではありません」、と付け加えた。
記事によれば、日本でも韓国でも、中国から安い農作物が大量に流れ込み、農業が大打撃を受けるとして、農業経営者がFTAに強く反対している。そのことが、交渉における障害となることを、韓国高官らは懸念している、と伝えている。
図解よくわかるFTA(自由貿易協定) (B&Tブックス) [amazon]