なぜ円安なのに貿易大赤字? 日本メーカーの現状に海外メディア注目
財務省は14日、昨年11月の経常収支赤字が、季節調整前で5928億円の赤字であったと発表した。比較可能なデータの残る1985年以降で最大の赤字である。1.25兆円に及ぶ貿易赤字が響いた。
フィナンシャル・タイムズ紙の指摘では、昨年、大規模金融緩和が始まった4月から11月までの8ヶ月のうち6ヶ月で、純輸出が昨年比減少となっている。主要経済圏で、輸出量が金融危機前のピークを大幅に下回ったままなのは日本だけだ。昨年15%ほども円が下落したにも関わらず、輸出が卓越しないのはなぜか。
【輸入コスト増】
理由のひとつは燃料などの輸入増だ。もともと福島原発事故後、国内原子炉の停止により代替エネルギーの輸入を余儀なくされていたが、その価格が円安で上がった。
震災で商品供給が止まった際に国内外顧客が契約を切り替えたままであることも指摘されている。また、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、来年4月の消費税増税前の駆け込み需要がすでに発生しており、それによる輸入(※原料含めてと思われる)の増加もあるという。
【そもそも青息吐息の日本メーカー】
だが専門家によると、原子炉を再稼働させても、赤字が圧縮はされるが、それだけで黒字には届かないという。厳しい円高時代が続き過ぎたためか日本の輸出メーカーがそもそもの競争力を失っている、というのだ。
11月、日本の電気機械の輸入(1.03兆円)が初めて輸出(1.02兆円)を超えた。そしてこの傾向は続きそうである。公正取引委員会は、液化天然ガスの輸入額を3月末までの年度に13.9%増と予測しているが、それに対しスマートフォンを初めとする機器輸入が25.7%、同じく自動車が14.6%、衣類が24.8%増だという。日本貿易会は同年度内の輸出を9.8%増に留まると予想しており、しかもこれは単に、円安で円換算額が膨らむからというだけだ。
【もう国内からの輸出はやれない】
さらに指摘されているのが、コスト削減目的での生産の海外移転である。こうなると海外受注があっても日本からの輸出としてカウントされず、それどころか日本への逆輸入さえありうる。安倍政権は金融緩和と円安で、こうした企業の国内回帰をも目指したが、成果にはつながらなかった。アジア各国に工場を展開し「地産地消」を掲げている、ベビー用品メーカーのピジョンは、「もう輸出主導型のビジネスはやっていないのです」と語っている。