中小企業22年ぶりに景気回復実感 しかし海外紙は消費増税の悪影響を懸念
16日発表の日銀短観で、大手製造業の景況感指数は6年ぶりの高水準に達した。中小企業は1991年以来初めて、業況判断「良い」が「悪い」を上回った。
しかし各紙は、一見安倍政権にとって良い結果のように見えるものの、「見出しの数字が示すほど良くない」不安の兆候も読み取れる、と警告する。
【構造改革の遅れが生む先行き不安】
各紙が挙げているのが、企業の今年度設備投資計画が9月調査の5.1%増から4.6%増へと下方修正されたことだ。フィナンシャル・タイムズ紙は、安倍政権が経済再生にあたり国内設備投資の復活を重視しているにもかかわらず、それら企業は来年4月の消費税増税を不安視し、いまだに「国内よりも国外で施設、工場、設備を購入することを好んでいる」と報じている。
またウォール・ストリート・ジャーナル紙は、中小宿泊・飲食サービスの感情指数がなおも「悪い」優勢であり、これは人口減少・高齢化のシワ寄せを最も受けやすい部分だからだとの、専門家の指摘を伝えている。
ニューヨーク・タイムズ紙は、これらは解雇規制や女性の労働力参入、生産性向上、正規労働者と非正規労働者の格差などについて、政権の労働市場改革が遅々として進んでいないせいだと批判する。同紙は、輸出業者、株主、大規模小売業者らがアベノミクス円安・株高で得た恩恵がまだ中小企業などに波及しておらず、雇用の70%と工業製品や部品の量の40%を占める中小企業が苦戦している限り、日本の成長は危ういと説く。
【消費税増税がアベノミクスの真の試練】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、現状が消費税増税前の「駆け込み需要」状態であることを警告する。1997年4月の前回増税時には経済は不況に転落し、その後銀行危機が続いたことでデフレ時代に突入した。政府は5.5兆円の刺激策で増税ショックに備えるが、同紙は、公的債務の高さに圧迫される日本には「それ以上」の対策余地がなく、場合によっては日銀の緩和拡大頼みになるとの意見が政権内にもあると報じる。