黒田総裁、まだ強気の政策維持 海外紙が指摘する不安要素とは
日銀政策委員会は21日、政策の現状維持を決定した。4月の大規模緩和以来、9会議連続での現状維持判断となる。木内登英理事が、緩和は2%インフレ目標を達成するまで無期限にではなく、約2年間の集中措置であることを明示すべきだと提案したものの、8対1で否決されている。
【今回も強気発言】
会議前、純輸出と民間消費の下落のため、第3四半期の経済成長が第2四半期よりも半減したことが明らかになっていた。
それでも黒田総裁は、企業投資の持ち直し、「弾力ある」民間消費、「全体的に上昇しているように見える」インフレ期待、欧米経済の回復などを指摘して、国内経済についてなおも肯定的な見方を示した。また、日銀にはまだ行動余地があり、経済が予想外の動きとなった場合、日銀は追加措置を「躊躇しない」と強調した。
【国民はアベノミクス前よりも不安】
しかし各紙は来年の消費税増税による消費冷え込み予測をはじめ、不安要素を指摘している。
フィナンシャル・タイムズ紙は、経済、雇用、所得、物価の面で今後12ヶ月についての消費者心理を測る、日本リサーチ総合研究所の「不安指数」が、10月には148に上昇し、昨年12月安倍首相就任時の145を上回ったと報じた。
ロイターは、アジア新興市場の低迷やヨーロッパのデフレ懸念など、海外リスクがなおも残ると指摘した。黒田総裁は、同日発表された調査で中国の工場活動の成長が11月にペースを落としたと示されたにもかかわらず、中国の国内需要が「非常に強い」と評した。ヨーロッパのインフレが欧州中央銀(ECB)目標を大幅に下回っていることについても、ECBは利下げに出たと反論した。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、来年の春闘にも触れ、労働者の賃金が上がらないと持続的なインフレは望めないと述べた。消費者物価指数は9月には前年同期比0.7%上昇したが、同紙は、不安定な原材料価格が主因であるに過ぎないと指摘する。
【怪しくても黒田を疑うな】
同紙はそれでもあえて、「投資家は彼の決意を疑うべきではない」とまとめている。黒田総裁は増税推進派だっただけに、消費税増税の悪影響が予想以上に厳しければ追い詰められ、上場投資信託や不動産投資信託、住宅ローン担保証券の大量購入に踏み切るかも知れない。「日本経済が弱さのフリだけでも示したら」、紙幣の大量印刷に等しい事態さえ考えられるのだという。