日本のリニア技術をアメリカに提供へ 車社会に変革を起こせるか?

 日本の超伝導リニア技術をアメリカに提案していた安倍首相は15日、米リニア関連会社TNEM社一行と面会し、輸出に向けた意見交換を行った。

 TNEM社は、ダシュル元米連邦上院議員や元州知事、元長官などの有力者で構成されており、アメリカのリニアを代表するリーディングカンパニーである。ワシントン―ニューヨーク間の北東回廊に超伝導リニアシステム導入を進めるため、ロビー運動をしている。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、安倍首相はボルチモア―ワシントン間の40マイル(約64キロ)に、リニアの走行路と推進システムを無償で提供することを申し出している、と報じている。

 なお、アメリカへのリニア技術提供については、今年2月に開催された日米首脳会談でもふれられていた。

【アメリカ鉄道の実情は】
 アメリカで最も速い高速列車は、最高時速110マイル(約176キロ)で、通常は平均時速80マイル(約129キロ)で運転されている。対して日本のリニアは時速315マイル(約507キロ)だ。

 現行で最も速いアセラ・エクスプレスは、ワシントン―ニューヨーク間(約370キロ)を、3時間前後で結ぶ。リニア導入により、わずか1時間で到着することが可能になる、とニューヨーク・タイムズ紙は報じている。エポック・タイムズ紙も、ニューヨークの交通渋滞を避けることができ、大変魅力的な交通手段の一つになり得るだろう、と報じている。

 他方、リニア導入にかかる莫大な費用に対しては懸念を示している。アムトラック(全米鉄道旅客公社)は、ニューヨーク―ワシントン間の費用は1100億ドル(11兆円)にのぼると試算している。TNEM社の資金5000万ドルでは全く及ばないと指摘する声もあるという。

【リニアの試乗体験と海外の反応は】
 リニアの試乗体験をしたTNEM社一行は、磁気浮上技術に「途方もない感銘をうけた」、とジャパン・タイムズに語っている。JR東海を称え、日米同盟のシンボルとしてこのテクノロジーを共有したい、とも述べたという。

 ただ、リニアは米国民にまだ十分に理解されていないため、啓発活動を続ける姿勢であるとも報じられている。

 またアメリカへのリニア導入について、大手ソーシャルニュースサイト「レディット」には、月間1位となる2800件以上のコメントが寄せられている。下記のように、日本とアメリカとの違いや他国の事情について言及したものなどだ。

・日本はいいよね、公共交通機関が発達してて。アメリカでは郊外の交通手段が少なく、ガソリンも安いから車で移動。ガソリンの消費が少なく公共交通機関が発達している日本は資源にとってもいいよね

・人口密度が高い日本では利用されるかもしれないけど、アメリカでは飛行機や自動車がある

・ドイツがすでに中国へリニア技術を提供していることも付け加えるべきだ。大金を投じて、短い距離の線路を作ったということもね

Text by NewSphere 編集部