消費税は上げるべき? 「不景気になるから反対」VS「債券市場が混乱するから賛成」

 来年4月、日本の消費税が8%へ引き上げられるかどうか、海外からも注目されている。景気回復を阻害するという反対論と、財政再建を先送りにするなという賛成論が、真っ向から衝突しているようだ。

【増税反対論 不景気を招いた過去に学べ】
 まず、経済評論家ピーター・タスカ氏は、フィナンシャル・タイムズ紙への寄稿で、増税のデメリットの大きさを指摘している。

 1997年にアジア危機が本格化した際、崩壊寸前となった日本の銀行システムを救済すべく、当時の橋本総理によって導入された消費税増税は、デフレをもたらし、税収もこの15年間で20%減少したと指摘。

 同氏は、増税は国債崩壊を防ぐ為に必要と語る官僚や政治家に対し、過去の教訓を無視していると批判。「日本が破産する」という主張はこれまで何度も唱えられているが、実際は、日本は最大の債権国だと指摘した。ただ、この間違った主張を唱え続けている有名なアナリストが参議院議員に当選したことから、この主張の強力さが伺えるとも述べている。

 また同氏は、安倍首相を、リフレーションの必要性を初めて理解した日本の政治家と評価。だからこそ、過去50年間で最も力強い株式市場の上昇を引き起こしたとみている。目標達成のために増税を保留できれば、脱デフレが最優先であるというメッセージが明確になり、国民も歓迎するだろう、と論じた。

【増税賛成論 債券市場のためにも増税待ったなし】
 HSBCのアジア経済リサーチ部門のフレデリック・ニューマン氏は、フィナンシャル・タイムズ紙への寄稿で、予定通り消費税を増税すべきと主張している。

 同氏は、過去の消費税増税が不景気をもたらしたという主張に対し、実際はアジアや米国の不景気の影響だったと反論した。

 また、安倍首相が増税の判断をギリギリまで伸ばそうとしていることに対し、確かにいくつか選択肢はあるとも述べている。ただ、結局のところ、先進国中最大の公的債務を改善するのか、痛みから目を逸らしてさらに債務を積み上げるのか、どちらの道を選ぶかの問題だと迫っている。同氏は、後者を選べば、日本の債券市場の混乱を招きかねないと警告している。

【別の視点から 日本の「失われた10年」は米国の勘違い?】
 アイルランドのジャーナリスト、エイモン・フィングルトン氏は、フォーブス誌への寄稿にて、日本の「失われた10年」は人口統計によるもの、と指摘するウィリアム・R・クライン氏の著書を紹介した。

 それによると、1991〜2012年のアメリカの労働人口は26%増加したのに対し、日本はわずか0.6%。したがって日本の1人あたりの生産高は伸びている事になると紹介している。クライン氏はこれを、米国の「良きデフレ時代」と似ていると分析しているようだ。

 総じて、「失われた10年」といった「日本衰退論」は、1980年代後半の日本の株価が過大評価されている事を理解していなかったアメリカ人の間で広まった、「神話」だという見方を示している。

 消費税増税については明確に触れていないが、増税反対論者の主張の根拠の一つである、「過去の増税が不景気をもたらした」ことへの反論に用いられるかもしれない。

Text by NewSphere 編集部