日本、TPP交渉参加へ 日本各紙が分析する今後の課題とは?
日米両政府は12日、環太平洋経済連携協定(TPP)の日本の交渉参加に向け、合意文書を発表した。日本の交渉参加には11ヶ国全ての同意が必要で、7月下旬以降となる見込み。
TPPは「関税の原則撤廃」を掲げている。しかし、2月の日米首脳会談では、全ての関税撤廃を求められないとする共同声明を発表していた。
今回の合意文書でも、自動車分野で、米国が輸入する日本車にかける関税を維持し、その期間は「最大限に後ろ倒しされる」と明記。さらに、保険分野では、政府が間接出資するかんぽ生命保険が、がん保険など新商品を申請した場合、日本政府は当面認可しないことを表明した。これらはアメリカの要望を受けてのもので、日本は大幅に譲歩した形だ。
一方、日本には一定の農産品といった慎重に扱うべき事柄がある、という確認も行った。
日本各紙(朝日・読売・産経)は、TPP交渉に関して意義と課題を提言している。
【評価】
総じて各紙は、TPP交渉参加にあたり、アメリカに譲歩した形だと評した。読売新聞は、早期参加の実現を最優先するためで、“やむを得ない”とみている。一方、朝日新聞は、コメなど農産品への配慮を求めた裏返しで、“早くも米国ペース”だと懸念をあらわにしている。読売新聞も、豪州など他国も「自動車関税引き下げ先送り」を求める可能性があり、輸出拡大にマイナスになりかねないと懸念している。
また、TPP自体の意義についても、各紙は改めて解説している。産経新聞は、海外市場の活力を取り込むことで、国内の規制緩和が進むことに期待している。安倍首相が掲げる「3本の矢」の成長戦略として、主に“農業の国際競争力の強化は不可欠”と主張する。読売新聞も、アジアの活力を取り込んで日本の成長を加速することが重要と論じている。
朝日新聞は上記の点に加え、政治・外交面の意義と効果にも言及している。特に、中国が、日本のTPP参加を契機に、日中韓FTAなどの交渉に積極的になったことを指摘。中国の改革を促す効果もあると分析している。
【課題】
一方、各紙は今後の課題についても分析し、政府に提言している。総じて、国益に資することが第一であり、不透明な合意はしないよう求めている。朝日新聞は、とはいえ、安全に関わる規制緩和には慎重になるべきと論じる。産経新聞は農業に関し「守り」だけでなく「攻め」の姿勢が必要として、過去、多額の農業対策費が公共事業に流れた愚行を、繰り返すなと主張している。