電力政策めぐる各紙の主張の違いとは?
自民党は19日、2020年までの実現を目指す電力制度改革の政府方針案を大筋了承した。ただ、「発送電分離」に必要な法改正案の提出時期については、政府案の「15年」から「15年を目指す」努力規定に修正した。政府は来週にも、電力制度改革の基本方針を閣議決定する。
日本各紙(朝日・読売・産経)は電力制度改革をどうみているのか。
「発送電分離」については、朝日・産経両紙は真逆の立場からそれぞれ批判している。
まず朝日新聞は、「発送電分離」の実施時期をあいまいにした自民党を批判している。政府案の中身をほぼ踏襲していることは認めつつも、これまでも言葉を曖昧にすることで“構造改革をなし崩しに形骸化してきた”と、自民党に対し警戒感をあらわにしている。最後には、「骨抜き」の汚名を返上する格好の機会だ、と皮肉交じりでエールを送っている。
同紙は、電力システム改革は新しいエネルギー政策の基盤であり、安倍政権が掲げる経済再生のカギでもあると高い期待を寄せている。原発再稼働が進まず電源に余裕がない状況で進めるべきなのか、という疑問に対しては、だからこそ、消費者が自由に電源を選び節電の工夫を進められるような制度にすべきだ、と主張している。
一方産経新聞は、喫緊の課題は「安価で安定した電力供給の実現」だとして、“取り組むべき順序を間違えている”と自民党・政府を批判した。同紙は、現在の電力不足を解消するめどがたっていないため、このままでは安倍首相の経済政策にも影響が出かねないと懸念している。政府・与党に対しては、原発の再稼働などすみやかに電力不足を解消するよう求めた。
また同紙は、民主党政権下で決まった電力制度改革の方向性は見直すべき、との姿勢だ。発送電分離自体も、規制緩和という一般論としては賛成のようだが、「副作用」への言及や、自民党の文言変更を評価するなど、どちらかと言うと慎重な姿勢といえる。
なお読売新聞は、社説等では取りあげず、事実関係を報じるのみにとどまっている。ただ、産経新聞と同様に、「発送電分離」に踏み切るには、電力の安定供給が必須である、としている。自民党の慎重な姿勢についても、“原発再稼働が見通せない現状では、こうした環境が整わない恐れがあると判断した”のだと予想している。