日本各紙がアベノミクスに求めるものとは?

 モスクワで開かれていたG20財務相・中央銀行総裁会議は16日、「通貨の競争的な切り下げを回避する」ことなどを含む共同宣言を採択して閉幕した。
 会合前には、日本の金融緩和策が「円安誘導策」だと、新興国などから批判もあったが、声明には日本への言及はなかった。会合に出席した麻生財務相・白川日銀総裁がこうした批判を否定し、日本の金融政策は「デフレからの脱却を目指す」ためだと説明し、一定の理解を得られたようだ。
 こうした状況下で、各紙は改めて「アベノミクス」の評価と今後の課題について論じている。

 まず、今回のG20における日本の取り組みについては各紙とも基本的に評価する姿勢だ。読売新聞は日本が名指しの批判を回避できたことを、産経新聞は円安誘導の意図はないという日本の説明が理解されたことを、それぞれ評価のポイントとして挙げた。
 ただし、両紙ともに手放しで評価しているわけではなく、急速な円安に対し、自国通貨高を招くと不満が各国にくすぶっていることを指摘した。そのため、閣僚や有力政治家らが「為替の適性水準に言及」することに対しては厳しく批判している。こうした口先介入は相場の波乱要因になり、海外の疑念と不満を招き、“アベノミクスの足をすくいかねない”(産経新聞)と警告を発した。朝日新聞も、株高が円安に依存しており、閣僚の不用意な発言で容易に円高・株安になってしまうと懸念している。

 では、そのうえで、各紙はどんな提言を行なっているのか。
 まず読売新聞は、政府・日銀に対し、アベノミクスの成果を着実にあげるよう主張している。昨今の円相場は、歴史的な円高が是正されたに過ぎないという見方もあるため、円安に頼らない「成長戦略」の具体化を急ぐべきという論調だ。世界経済に明るい兆しが見えてきたものの、成長と財政再建の両立という各国共通の課題は根深い。世界経済の安定に寄与するためにも、日本は“デフレ脱却と経済再生”を急ぐべきと主張している。
 産経新聞は、原発再稼働問題への対処が必須だと示唆している。まず、円安はエネルギー資源などの輸入にはダメージを与えることを指摘。そのうえで、原発停止により火力発電に頼らざるを得ない現状では、輸入コストの上昇は、日本経済に“冷水を浴びせかねない”と憂慮している。
 一方朝日新聞は、「円安頼み」の現状を懸念し、各企業に対し「成長への行動に踏み出す」ことを求めた。消費拡大のために国民の成長への期待感を高めること、端的には「賃金上昇」が必要だと示唆している。背景として、デフレ長期化の要因の一つは、賃金抑制で利益を確保しようという企業姿勢にあったと警告。さらに、安倍首相の賃上げ要請に対し経済界は賞与積み増しを検討していることを紹介した上で、“賃金デフレの主因は賞与がもらえない非正規労働者の急増だ”と批判している。とはいえ、非正規・正規社員の格差是正と経済活性化をどう実現するかは、各々工夫すべきとしており、具体的な処方箋は提示できていない。

Text by NewSphere 編集部