原発新安全基準に関する各紙の見解の違いとは

原発新安全基準に関する各紙の見解の違いとは 原子力規制委員会は31日、原発に義務付ける新たな安全基準の骨子をまとめた。これまで重大事故対策は電力会社の自主的対応に任されていたが、東京電力福島第1原発事故を踏まえ、大規模な自然災害やテロにも対応できるよう、様々な安全設備の設置が義務付けられることになる。
 まず地震・津波対策として、活断層の調査年代範囲拡大、最大級の津波を想定した防潮堤整備が挙げられた。また原子炉建屋から離れた場所への「第2制御室」設置や、放射性物質の除去フィルター付き排気設備の設置、耐火設備の強化なども盛り込まれた。
 今後はパブリックコメントにかけて国民の意見を聞き、7月に新基準を施行する予定だ。

 本件に関する社説は、原発をめぐる姿勢の差が如実に現れた。論点は、安全基準は何のためのものか、実際どのように制定・運用すべきか、といった点である。

 朝日新聞は、「危ない原発、動かさない原発を仕分ける基準」にすべきと論じた。背景には、前政権の「原発ゼロ」方針を見なおした安倍政権の、「安全性が確認された原発は動かす」姿勢がある。新安全基準について、実際に適用するには時間も費用もかかることは認めた上で、だからといって電力各社は、対応の先送りや料金値上げで乗り切ろうという発想は許されないと断じた。政府に対しても、経費を料金に転嫁出来る方式の見直しなど、改革を進めるよう求めた。

 読売新聞は、安全基準は原発稼働の是非を判断するためのもの、と朝日新聞とは正反対の立場から論じた。電力の安定供給には原発の再稼働が不可欠、という認識にたっての主張である。その上で、新安全基準に対しては、個々の具体的な対策を一律に適用するのではなく、整備の時間や費用も鑑み、原発ごとに柔軟に適用するべきとしている。さらに幅広い専門家の声を聞いた上で、“合理的かつ効率的”な規制を求めた。

 産経新聞は、「安全性の積み上げに貢献する基準となることを期待」と論じた。新安全基準の個々の対策は有効と認めつつ、硬直的な対応で予期せぬ支障を招くことを懸念している。具体的に述べられてはいないが、その後に「あらゆる工学システムには、故障にリスクがつきまとう」とあることから、新基準を適用してもトラブルが生じた際、改定が検討され、半永久的に稼働できない事態を懸念していると考えられる。

 なお、上記のように「リスクをどう論ずるか」でも違いが見られた。産経新聞は、「ゼロリスクの幻想」にとらわれると机上の空論に陥ると懸念し、合理的な精神の必要性を説いた。一方朝日新聞は、「リスクはゼロにはならない」からこそ、原発の安全策に「これでよし」は訪れないため、「動かせる原発は限定されてくる」と論じている。

Text by NewSphere 編集部