日仏協力で世界へ?仏政府、日本の仏スタートアップを積極支援へ フレンチ・テックレポート

 10月5日、マニュエル・ヴァルス・フランス共和国首相の来日に際して、フランスの貿易・投資促進機関ビジネスフランスが世界で展開するキャンペーン「フレンチ・テック」における、ニューヨークに次ぐ3番目の拠点としてローンチされた。

 ローンチイベントとして、恵比寿デジタルガレージ本社内で、同国発のITを事業に置くスタートアップたちにおけるピッチコンテスト「FRENCH TECH TOKYO」が開催された。

 首相の来日には、イノベーション分野における経済協力および、アフリカにおける協力を含む安全保障協議が背景となっている。FRENCH TECH TOKYOには、世界に挑戦する若いフランス発のスタートアップを応援していきたいという政府の思いが込められている。

◆フランススタートアップを政府が支援する「フレンチ・テック」
 フランス政府は今年、1月29日にハイテク産業企業を認定する「フレンチ・テック」マーク制度の新たな振興策を発表した。フランス政府が積極的に、自国の起業家とコミュニケーションを取ろうとした試みであり、国内の起業家を引き連れてCESなど大規模なテックイベントへ向かったり、今回のように国内起業家が世界に挑戦する為の各拠点を置くなど、既に具体的な活動も目立っている。

 スタートアップ業界では珍しい、政府が先立って施策を練っており、期待が高まっている。政府がスタートアップ業界に関心を持つといえば、ちょうど今年の春に安倍首相がシリコンバレーを訪問していた件も話題となった。

◆日本とフランスの科学融合を見計らった「FRENCH TECH TOKYO」でのピッチ
 フランス企業のスタートアップの特色は、世界や日本で流行しているトレンドをキャッチアップしている一方、まだ競合がそこまでいないスポーツ産業をテクノロジー化する企業や大学との共同開発も積極的に行われているような印象を受けた。

 VOGOは、スポーツの観戦へやってきたのにもかかわらず、座席の配置が悪いせいで全く試合が見られず、テレビで観れば良かったというような問題を解決するサービスである。この問題を、VOGOはスマートフォンやタブレットで、選手に近いアングルやスタジアムを俯瞰するアングルなど、自在に操作して観戦することができる。また、アングルの操作だけでなく、リプレイやスローモーションでの観戦要望にも対応している。

 一方で、Cityzen Sciencesは着用している服をウェアラブル端末として機能させる「D-Shirt」を発表した。これは、心拍センサー、圧力センサー、GPS、ジャイロセンサーなどを同製品から感知し、自身のスマートフォンアプリから確認することができるというものである。同社は信州大学とエネルギーハーベスティングを使った、電池不要の給電技術を共同開発中のようだ。

◆フランスと共に世界で戦うスタートアップの選択肢が増える 
 フランスと日本は、古くからの仕来りが社会に強い影響を与える文化背景を同じくするだけでなく、今後の展望についても似通ったミッションを掲げている。それは、グローバルの市場をカスタマイズして狙っていく必要がある点だ。両国共に、英語ではない公用語が普及し、また国内市場は独特な文化を持ち合わせており、ローカライズが難しいことが指摘されている。

 こうしたことが要因で、国外の企業が市場を占有するのを防げる一方で、国内発の企業は国内で収まってしまっている。しかし、インターネットの普及に伴い、世界が均一的な経済へと進んでいることから、もはや国内だけのビジネスでは不足がある。両国共に、世界を足がけにして、ビジネスを展開していく必要があるのだ。

 今回のイベントで、フレンチ・テックが訴えた一つの項目に「R&D」がある。フランスは航空機器業界の最大手エアバスや、原子力大国として名を馳せた工業大国の一つである。これからやってくるIoT時代に向けて、日本の繊細なモノづくりの技術と、どういったシナジーを起こし、どんなビジネスが生まれるのかが期待される。

Text by 山田俊輔