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ヨーロッパのディーゼル車離れにも影響か VWの排ガス規制逃れが大事件である理由とは

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ヨーロッパのディーゼル車離れにも影響か VWの排ガス規制逃れが大事件である理由とは

 フォルクスワーゲン(VW)がディーゼル車に排ガス規制を不正に逃れるためのソフトウエアを組み込んでいた問題は、今後の影響の大きさの面からも注目を集めている。VWだけの問題では済まず、ドイツの自動車産業全体、ひいてはドイツ経済全体への影響も懸念される。また、ディーゼル車が好まれてきたヨーロッパにおいて、脱ディーゼル車の動きが加速するのではないかとの見方もある。

◆事件のあらまし
 米環境保護局(EPA)は18日、アメリカで販売されたVWおよびグループ傘下のアウディのディーゼル車約48万2000台について、不正なソフトウエアが組み込まれていたと発表、リコールを命じた。このソフトウエアは、各種センサー情報などから試験であることを検出した場合に排ガス抑制装置を作動させるもの。通常走行時には燃費などの性能低下を防ぐため、この装置を作動させず、最大で基準の40倍の窒素酸化物(NOx)を排出していたとされる。

 VWは今後、数々の困難に直面することになる。まずEPAより、最大で180億ドル(約2兆1500億円)の制裁金が科される可能性がある。またユーザーによる損害賠償請求の集団訴訟が待ち構えている。さらに米司法省が刑事訴追を視野に入れた調査を始めた。

 VWの22日の発表では、内部調査によると、このソフトウエアが組み込まれた車は全世界で1100万台に上るという。各国の法律や規制次第ではあるが、同様の事態はアメリカ以外でも起こりうる。欧州の株式市場では、21・22日の2日間でVWの株価がおよそ4割下落した。

◆VWの評判が悪化。回復には相当の年月が必要か
 VW車の評判の悪化は避けられないだろう。ワシントン・ポスト紙(WP)によると、VWには環境にやさしいというイメージがあったが、この不正事件でそれが損なわれた。該当車種のあるユーザーは、「この車はもう持ちたくない」「この車を約4年半も乗り回して、大気中に有毒ガスを噴出していたことを思うと気分が悪い」と語った。さらに所有者にとっては、中古買い取り価格が下落するという心配もある。

 アメリカ人はマイカーを自身の延長とみなすため、自動車業界では信頼回復は特に難しいだろう、とニューヨーク州立大学バッファロー校で企業責任を研究するトリーナ・ハミルトン准教授はWPで語っている。乗っている車によってなにがしかの判断を受けるため、人は車選びでは慎重になるので、問題の起きた会社の車にはなかなか手が伸びない、ということのようだ。

◆ドイツの自動車産業全体にまで影響は及んでしまうかも?
 VWは従業員数が約60万人に及ぶ超大企業だ。そのうちドイツ国内の職員は約27万人で、ドイツ最大の民間企業である。WPによると、VWだけでドイツの全雇用の1.5%を占めるという。今年の1~6月期では、世界販売台数がトヨタ自動車を追い抜いてトップとなった。しかし今後は販売台数の低下など業績の悪化が予想される。

 VWだけの問題では済まないかもしれない。WPは、ドイツの自動車産業全体に悪影響が及ぶかもしれないとの見方だ。「ドイツのエンジニアリング(工学技術)」という言葉は性能と信頼性の証だったが、VWの不正事件のために、この名声が害される恐れがあるとしている。この名声は、ドイツの自動車業界全体が、何十年にもわたって注意深く守ってきたものだったが、この事件のせいで台無しになった、ともしている。

 インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ紙(INYT)によると、ドイツの雇用者の7人に1人が自動車関連産業に従事しているという。ドイツ銀行によれば、西欧で毎年販売される自動車のおよそ半数がドイツ製だ(WP)。自動車・自動車部品セクターはドイツにとって最も優良な輸出産業であり、昨年の輸出はドイツの全輸出の約5分の1を占めたそうだ(ロイター)。それだけに、もしドイツ車の人気が陰るようなことがあれば、その影響は大きい。

 投資銀行INGのチーフエコノミストのカルステン・ブルゼスキ氏は、調査レポートで、「ドイツ経済はギリシャ問題、ユーロ危機、中国の景気減速をものともしなかったが、今や、長い間で最大の下振れリスクに直面しているかもしれない」「このことで皮肉なのは、今や脅威は国外からではなくて、国内から生じるのかもしれない、ということだ」と述べた(WP)。

◆ヨーロッパのディーゼル車好きにも変化の兆しが。この事件で流れが加速?
 今回の事件によって、ヨーロッパのディーゼル車好みに終止符が打たれるかもしれない。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)とロイターがこの点に注目している。

 ロイターによると、世界のディーゼル車の販売台数の約4分の3をヨーロッパが占めている。2014年にはヨーロッパの乗用車の4割がディーゼル車だったそうだ(WSJ)。また同年の新車販売のうちディーゼル車の割合は53%に達したそうだ。

 日本の感覚からすると意外なことだが、WSJによれば、ヨーロッパではディーゼル車は燃費がよくてクリーンな車というイメージがあるようだ。欧州各国の政府も、ディーゼル車はガソリン車よりも燃費効率が良く、使用燃料が少なければそれだけCO2排出も少なくなるという理由で、20年前から、ディーゼル車の普及を補助金などの優遇措置で後押ししてきたという。

 ユーザーにとっては、燃料費の安さがディーゼル車の主要なセールスポイントだそうだ。フランス、イタリア、ドイツなどのディーゼル車の主要マーケットでは、ディーゼル燃料はガソリンと比べ10~20%低価格だという。これは、ガソリンと比べ課税額が大幅に少ないためだそうだ。

 けれども、ロイターによれば、この流れは変わり始めていたという。ディーゼル車が排出する汚染物質と呼吸の問題との関連を示唆する研究により、ディーゼル車がどれほどクリーンなのかについての疑念が持ち上がっているとのことだ。WSJでも、ディーゼル車が排出する亜酸化窒素と微粒子物質が、大都市での大気汚染悪化の原因とされており、ここ数年はディーゼル熱が衰え始めている、としている。各国はディーゼル車の税制上の優遇措置などの再考を始めているという(ロイター)。

 そのタイミングでVWの不正事件が起きた。ディーゼル車に対する視線がますます厳しくなることが予想される。ヨーロッパでは、ディーゼル車の排ガス基準の強化を図る動きもある。今回の事件がその動きを加速させるかもしれない。メーカーにとっては新基準を満たすためにコストの増大が見込まれる。価格面などでディーゼル車のガソリン車に対する優位性が失われれば、ユーザーのディーゼル車離れが進むかもしれない。そのような見通しをWSJとロイターは示している。

◆ドイツ人のセルフイメージを損なう事件?
 今回のVWの不正事件は、ドイツ人にとってアイデンティティーの危機となるかもしれない。INYTはそのような趣旨を語っている。単に企業の悪事という話にとどまらず、ドイツの最も象徴的な企業の1つによる組織的なごまかしの発覚は、自分たちはきちんとした国であるというドイツ人自身の認識に鋭い一撃を与え、また自分たちはヨーロッパの道徳的指導者だという主張を損なった、としている。

 これには、ギリシャ問題や難民問題などでヨーロッパをリードしようとしているドイツの姿が背景にある。今回の事件で、その自信がぐらついたのではないかという趣旨だ。

(田所秀徳)

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