“最高の瞬間”トヨタ、営業利益2.7兆円へ上方修正 米メディア賞賛 日本経済牽引の期待も

 トヨタは、2015年3月期の連結業績予想を大幅に上方修正し、営業利益が前期比17.8%増の2兆7000億円になる見通しだと発表した。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙とニューヨーク・タイムズ(NYT)紙は、このトヨタの好調を大幅な円安と好調なアメリカの自動車市場に原因を見る。ブルームバーグは、トヨタが日本経済の活性化への牽引役となることに期待を寄せた。

◆大幅な円安と好調なアメリカの自動車市場
 WSJ紙は、トヨタの今年度の利益は海外での販売利益を増幅する対ドルでの円安によるものであった、としており、NYT紙も、日銀が大規模な金融緩和による大幅な円安により「トヨタは最高の瞬間を楽しんでいる」と伝えている。

 NYT紙は、アメリカの自動車市場は好調で、アメリカでメジャーな自動車メーカーは、収支報告書の通貨がどれであろうと、今のところはうまくやっていると伝える。WSJ紙は、トヨタのアメリカでの販売数は、収益性の高いSUV車とピックアップトラックが半分を占めていることなども伝えている。

 また、NYT紙は、トヨタのコスト削減が実を結んでいることも指摘する。リーマン・ショックによる金融危機で円が急上昇し、1950年代以降初となる損失を出したものの、「コスト改善」により、為替変動による利益とほぼ同額の税引前営業利益2000億円を得たことを伝えている。

◆2015年の販売総数は減少の見込み
 しかしながら、トヨタにバラ色の先行きが待っているのではなさそうだ。WSJ紙もNYT紙も、トヨタが2015年度の販売は鈍化するとの見通しをしていることを報じている。トヨタは、日本や東南アジアでの需要低迷を理由に、ダイハツや日野自動車などのグループ会社を含めた販売総数を前年比1%減の1015万台としている。

 それでも、トヨタのチャレンジは続く。WSJ紙は、トヨタが昨年末に燃料電池車の販売を開始し、今後の2年間で幅広い分野の車で衝突防止システムを展開する準備を進めていると伝えている。また、年間の研究開発予算を2%増の1兆円に、資本支出予算も2%増の1兆500億円に増加させたことも伝えている。

◆日本経済の活性化への牽引役に
 ブルームバーグは、好調なトヨタが日本経済の活性化への牽引役になるかどうかに注目している。

 ブルームバーグは、トヨタの佐々木卓夫常務の言葉を引用して、自動車部品のサプライヤーに対する通常の値下げ要求を見送ることで、円安の恩恵をサプライヤーにも還元し、経済の好循環に貢献したいとのトヨタの考えを示した。「価格改定ついて話し合っており、日本のデフレ環境から脱却を図っている」「2次、3次サプライヤーに経済の活性化が浸透して全体が前向きになることは重要だと思っている」。

 さらに、ブルームバーグはトヨタの春闘での賃上げ交渉にも注目している。日本の実質賃金は、生活費の上昇や消費税増税で前年比で2.5%減となっており、このことが円安による利益を還元させる圧力となっている、とブルームバーグは述べる。また、トヨタの賃上げは、安倍政権が日本企業の賃上げへの無関心を克服するのに必要な勢いを、多少は与えるだろうとしている。

Text by NewSphere 編集部