“円安で延命”任天堂決算、海外紙厳しい評価 岩田社長の戦略、限界と指摘

 任天堂は、2015年3月期の営業利益予想を400億円から200億円に下方修正したと発表した。当期の純利益は300億円と見ており、以前の予想の200億円からアップし、前年度の232億円の赤字から急転換する見込みだ。

◆円安が貢献
 イギリスのガーディアン紙は、「円安で延命」の見出しをつけた記事で、任天堂が抱える問題を指摘している。

 同紙は、任天堂はソニーやマイクロソフトとの競争だけでなく、スマホ・ゲームの人気に押され苦境に立っていることから、営業利益を目標の半分に下方修正したと解説する。また、任天堂のセールスの70%は日本国外であげられており、その40%はアメリカから来ていることを指摘。純利益が増えるのは、急激な円安によるもので、利益を円換算すれば、海外セールスは膨張すると述べている。

◆スマホへのソフト提供を拒絶
 ブルームバーグは、任天堂の岩田社長の戦略は、「マリオカート8」、「大乱闘スマッシュブラザーズ」などの人気ソフト投入で客を引き付け、ゲーム機の販売につなげるというものだったが、限界が示されたと指摘する。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によれば、任天堂は投資家やアナリストからの、スマホやタブレットへのソフト提供の求めを、何年にも渡り拒否。自社機を通じたソフトの販売モデルに、経営陣が固執してきたと述べる。ガーディアン紙も、アナリストたちが、岩田社長にモバイル・デバイスに目を向けること、また任天堂のゲームが、競合他社のゲーム機でも楽しめるようにすることをアドバイスしてきたと報じている。

 しかし、任天堂は「ルールとして、自社機用のゲームをスマート・デバイスに提供することは考えない」、「スマホ・ゲームに追随すれば、既存の自社ゲームをスマート・デバイスに提供するだけになり、そんなやり方に未来はない」と主張する(ブルームバーグ)。

 WSJは、シリアスゲーマーはソニーやマイクロソフトに、カジュアルゲーマーはスマホ、タブレットへ流れていることに注目。今や任天堂に残されたのは、スマホを持たない子供達と、マリオやポケモンが好きすぎて、専用のハードには気前よく大金をつぎ込む大人だけになっていると述べ、Wii Uや3DSの人気の下降と、任天堂の顧客の縮小を指摘している。

◆人気復活なるか?
 一方任天堂は、11月下旬に『アミーボ』という近距離無線通信機能を内蔵した、ゲーム機に連動させるフィギュアを発売した。マリオやドンキーコングなど、40種の人気キャラクターを、Wii Uのゲームパッドや3DSの画面にタッチさせるだけで、ゲームに登場させ、成長させて遊ぶことができる。すでに世界で570万個を販売。同社のおもちゃを売るという戦略が成功するかどうかが注目される。

 しかし、エース証券インベストメントリサーチセンターのアナリスト、安田秀樹氏は、アミーボ登場でも「せいぜいWii Uの現状維持が精いっぱい」と見ており、「ゲームビジネスのカギは勢い。任天堂は新しいハードを考えるべきだ」と、起死回生の一打としては力不足との見解を示した。

Text by NewSphere 編集部