トヨタ、中南米でなぜ躍進? 現地メディアが歴史に注目
トヨタの業績が好調だ。最終利益は2兆円に達する見通しで、海外からの注目度も高い。不景気のアルゼンチンでは、他のメーカーが苦しむ中、生産・販売とも成長させた。中南米の経済専門紙『アメリカ・エコノミア』は、同社常務で中南米本部長のスティーブ・セントアンジェロ氏(59)にインタビューし、強さの秘密を探っている。
◆消費者らの声をもとに商品を改善
セントアンジェロ氏はアメリカ、メキシコ、カナダの自動車業界で40年近く働いてきた。トヨタ入社は2005年だ。米国のトヨタ海外統括管理会社(TEMA、TMA)の経営に携わり、2013年から中南米本部長を務めている。
同紙は、保守的な印象のあるトヨタで、なぜ日本人ではなく外国人が起用されたのか、と質問した。対して同氏は、市場・消費者の深い理解が必要な点、それに基づく迅速な意思決定や日本の開発者へのフィードバックが必要だったと語った。
具体例として、車種『エコー』のケースがあげられている。エコーを市場に出した時の反響は、期待に反して「まあまあ」な印象だったという。すぐに原因解明のため、専門誌記者、情報屋、ディーラーなど、あらゆるソースから情報を集め、改善点を15項目にまとめた。エコーは発売から1年も経っていなかったが、消費者を満足させる為に、そのうち13項目を取り入れて改善してきたという。
また、以前は中南米でハイブリッドカーのメリットが全く知られていなかったため、驚いたという。ハイブリッドカーは、静かで、燃料消費を節約でき、環境保護に貢献する「未来の車」だ。これを知ってもらうべく、まずブラジルの工場で情報教育をスタートし、各国に普及させたという。
◆社長自ら試乗
さらに同氏は、以前に比べ、デザインが大胆になっている点を指摘している。販売が大胆になっているとも語る。背景には他社との競争の激化があるが、トヨタは競争を好む社風だとも述べ、自信を示した。
高い品質、耐久性、安全性がトヨタを特徴づけてきたことも強調する。新車種には豊田章男社長自ら試乗し、スピードを出してのカーブの切れ具合などをチェックし、全ての細かな点に注意を向けている、という。社長の合格がなければ販売できない。
ラテンアメリカに関しては、トヨタ工場はどこもフル稼働であり、必要とあらば土曜も嫁働している。それが納期においても良いサービスに繋がっている、と語った。
◆ トヨタの中南米での展開状況
トヨタはブラジル3工場、ベネズエラ1工場、アルゼンチン1工場を持つ。アルゼンチン工場は、生産開始時(1997年)は2万台だったが、現在は9万2000台となっている。さらに8億ドル(約940億円)を投資し、14万台にまで生産力を強化する計画だ。生産車種はハイラックス。国内市場向けが10%で、70%が主に他のラテンアメリカ諸国への輸出だ。貴重な外貨獲得手段として、厳しい同国経済に貢献している。
ペルー、ボリビア、チリではレクサスが好調である。
トヨタにとって、中南米で本格的に進出が遅れていたのはメキシコである。タコマスを6万3000台生産しているが、今年からサブコンパクト車種の生産をマツダの工場プラントを使って生産開始する。その投資額は2億4000万ドル(約283億円)。当初5万台を生産し、8000台を国内市場に充て、残りは北米向けである。
ラテンアメリカ市場での販売台数は40万台で、2013年は22%の販売の伸びを見せた。昨年は6%の成長だ。伸びしろは大きいといえそうだ。