ソフトバンク出資のGrabtaxi、“したたか”と“愚直”で東南アジア普及

 ソフトバンクは、東南アジアのタクシー配車アプリ「グラブタクシー」を所有するグラブタクシー・ホールディングスに、2億5000万ドル(約300億円)を出資し、最大の株主となった。成長著しいインド、東南アジアで、ソフトバンクが多額の投資を始めたと、海外メディアが報じている。

◆東南アジア最大の配車アプリ
 グラブタクシーは、マレーシア、フィリピン、タイ、シンガポール、ベトナム、インドネシアの17都市でサービスを展開するタクシー配車アプリで、携帯から、近くにいるタクシーを呼ぶことができる。すでに250万ダウンロードを達成し、月間アクティブユーザーは50万人と地域最大。5万人のタクシー運転手がそのネットワーク内にいるという(ウォール・ストリート・ジャーナル紙、以下WSJ)。

 創業者でチーフ・エグゼクティブのアンソニー・タン氏は、「今回の資金調達は、今まで以上にアグレッシブに、東南アジアの人々の移動方法に革命をもたらし、改良するという我々のミッションの助けとなる(フィナンシャル・タイムズ誌、以下FT)」と述べ、資金は地域におけるアプリの拡大を加速させることに使用する、と発表した(ロイター)。

◆地域の事情に合わせたサービス
 マレーシア出身のタン氏は、ハーバード・ビジネス・スクールにいた時期、グラブタクシーのアイデアを思いついたと、WSJに話す。タン氏は2012年にマレーシアで最初のサービスを開始。会社の拠点は、現在シンガポールに置かれている。

 タクシー配車アプリは、東南アジア、特に世界で一番自家用車の購入費用が高い国の一つであるシンガポールでは、人気が高い。ピーク時やスコールの時間帯にタクシーを捕まえるのは、シンガポールでは至難の業。また、マニラやジャカルタなどの交通量の多い都市でも、タクシー探しは容易ではないという(ロイター)。

 このような状況もあり、配車アプリの需要が急増。しかし、ライバルのUberは、ドライバ―と乗客を結びつけるというアプローチで、マーケットと規制当局を混乱させており、タイやベトナムでは問題となっている、とWSJは指摘する。シンガポールの交通局は、すでに第三者が運営するアプリに対し規制する方針を表明。東南アジアマーケットにフォーカスするグラブタクシーは、タクシー会社のタクシーしか配車を行わないとし、当局と常に協力する姿勢を打ち出している(ロイター)。

 また、Uberとは異なる点で言えば、グラブタクシーは運転手と直接面談を行い契約を行っている。東洋経済オンラインによると、グラブタクシーはインターネットでの申し込みは受け付けず、手間はかかるがすべての運転手と直接面談を行い、徹底した身元確認を実施している。そうすることで、契約運転手の質を担保し、サービスの向上につなげているようだ。

◆成長地域に積極投資
 FTは、ソフトバンクの孫正義社長をアリババの筆頭株主と紹介。孫氏は「インターネット革命の巨大な波」の中で、急成長するインドや東南アジアのインターネット企業をターゲットに、さらなる投資を誓っていたと述べる。実際に、ソフトバンクはこの秋だけで、インドやインドネシアのeコマースを展開する企業に6億ドル以上を投資。ロイターによれば、孫氏は急成長するインドのオンライン・リテール市場に、100億ドルをつぎ込む計画だという。

 WSJも、今回のグラブタクシーへの出資はかなりの額だとし、ソフトバンクが人口の多い地域に拡大する計画であることを指摘している。

Text by NewSphere 編集部