日産、シェア拡大より利益率改善へ転針か? 為替差益はもう期待できず

 日産自動車は12日、決算を発表した。2013年度の連結売上高は前年比20%増の10.5兆円、純利益は14%増の3890億円であった。日本では売上11%増で、消費税増税前の駆け込み需要が影響したという。

 また、最大市場であるアメリカでは販売台数が13%増、中国も17%増で最大市場の座を奪う勢い。一方、東南アジア・オセアニアでは、タイでの政情不安のあおりを受けて17.8%減となった。

 2014年度の業績予想は、売上10.8兆円(2.9%増)、純利益4050億円(4.1%増)を見込んでいる。

【実はそれほど明るくもない増収増益】
 しかし日産の株価は、アベノミクスと円安が動き始めた2012年11月中旬以来、27%しか上昇していない。それに対しライバルのトヨタは80%増、ホンダは41%増である。また日産の営業利益率は5.3%で、トヨタの8.9%やホンダの6.3%、さらに自身の前年の5.4%よりも低い。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、利益率の低さについて、販売奨励金の高コストと、新興国市場の弱さが足を引っ張った、と報じている。日産は520万台の販売目標を狙って、前年550億円であった販売奨励金を2670億円に増額していた。その結果、目標は達成できたが、利益率は大きく損なわれることとなった。

 また日産は、発展途上国向けの安価な新型ダットサンに期待している。現状まだ570台しか売れていないが、今後新工場稼働などに伴い急拡大する見込みだという。カルロス・ゴーンCEOは、「この数字はまだ日産のポテンシャルを反映していません」と語っている。だがロイターによると、このダットサンもまた、利益率に悪影響を与える恐れがある。

【為替、昨日の味方は今日の敵】
 日産の営業利益には、円安による為替差益2476億円が大きく貢献している。しかし今後、レートが安定するに伴って、これはむしろ為替差損に転ずる、と自動車各社は見ている。日産は今年度、為替差損550億円の見込みだ。

 トヨタの場合は、昨年度9000億円の差益を受け、今年度950億円の差損を予測している。フィナンシャル・タイムズ紙によると、日産の方が損益変動が小さいのは、規模の小ささと、「販売する車10台のうち8台が海外製造だという高い現地生産レベルを反映している」のだという。

【微妙に弱気な目標】
 日産は今年度も増収増益を狙っており、また2016~17年までに営業利益率と世界シェア8%という目標を掲げている(世界シェアは現在6.2%)。

 しかし日産は、昨年度の営業利益予想を4200億円としていたはずであり、今年度4050億円の目標でも、それより下がることになる。またトムソンロイター調査のアナリスト平均予想も、4254億円ある。

 ゴーンCEOは、これまでの生産能力拡大などの投資がいよいよ実を結びつつあると述べている。しかしウォール紙は、ゴーンCEOが、シェア目標よりも利益率目標を重視する方針転換を示唆したと報じている。市場シェア目標は「あくまでも目標」であって、市場シェアを追求せんがために利益を犠牲にするつもりはあまりない、とのことだ。

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Text by NewSphere 編集部