“若者離れ”で斜陽のパチンコ業界、カジノ経営に本腰か? 海外紙が分析

 カジノ解禁を推進する法律「IR推進法」が、今期国会で本格的に審議入りする見通しだ。日本にとって新しいギャンブルの解禁が秒読み段階に入った一方で、これまで全国を席巻してきたパチンコの遊技人口が大幅に減少している。

 一部の海外メディアも、この「世界標準」のカジノ解禁の動きとともに「日本だけ」のパチンコの衰退を報じ、日本におけるもう一つのグローバル化の動きに注目している。

【パチンコは「死につつある」】
 「色と光、音の乱痴気騒ぎだ。ゲームセンターとカジノが完璧に融合している」−。アメリカのネット新聞、『ハフィントン・ポスト』は、3月5日付の旅行コラムで、日本のパチンコをこう表現する。コラムは「ギャンブルを制限する法律をすり抜けるために、日本人は卑怯な手段を作り上げた」と、いわゆるグレーゾーンにある換金システムも含め、アメリカ人旅行者に向けてパチンコの楽しみ方を詳しく紹介している。

 「日本人にとっては、盆栽の手入れと同様の、それ以上に楽しい気晴らしだ」(『ハフィントン・ポスト』)と、パチンコは海外の目からは日本独特の“文化”の一つとして映ることもあるようだ。その一方で、当の日本人の間では「パチンコ離れ」が進んでいる。公益財団法人日本生産性本部の調査によると、パチンコの遊技者はこの20年で2/3の1100万人に減った。20代の遊技者は6人に1人、20代以下では50人に1人で、特に若者の遊技人口の減少が顕著だ。

 フィナンシャル・タイムズ紙(FT紙)は11日付の記事でこうした数字を取り上げ、パチンコは「日本の若い世代からは見捨てられている」「“サラリーマン”の典型的な余暇は、(パチンコホールが)一見どこにでもあるにも関わらず、死につつある」と報じている。

【パチンコ業界大手はカジノ経営に移行か】
 FT紙はまた、小規模なパチンコホールが廃業に追い込まれている一方で、業界大手はパチンコに見切りををつけ、解禁を見越してカジノ経営に軸足を移しつつあると報じる。同紙によれば、例えばパチンコ台メーカーのセガサミーは、国内で経営難のシーサイドリゾートをカジノ用地として買収したほか、韓国の運営会社と提携してソウル近郊にカジノ建設を計画しているという。

 パチンコホール運営会社、ダイナムもカジノ運営に参画するため、複数のアジアの運営会社と提携に向けて協議を重ねているという。同社の佐藤洋治・取締役会議長は9日付のロイターのインタビューに答え、パチンコホール運営のノウハウを持つ国内地方都市に絞り、マカオ、韓国などの運営会社と提携してカジノ開設を目指していると明かした。

【カジノ解禁による収益も中国人観光客から?】
 FT紙が報じた投資会社の試算によると、日本に10数カ所カジノができれば、年間400億ドル程度の収益が見込まれるという。これは世界最大の市場を持つマカオより約100億ドル少ない計算になる。
 
 同紙は、今の日本の若者は「親世代よりも可処分所得が少なく、モバイル端末用のゲームに消費することを選ぶ」と、パチンコのみならずギャンブルそのものに関心がないと論じる。そして、上記のようなカジノの収益も「ほとんどが中国人観光客からもたらされると見られている」としている。

パチンコ「30兆円の闇」 (小学館文庫) [amazon]

Text by NewSphere 編集部