“患者より医師優先”な日本は異質…ノバルティス社、企業文化刷新のため、日本の経営陣更迭
3日、スイス大手製薬会社の日本法人であるノバルティスファーマは、臨床研究への不適切な関与の責任をとって二之宮義泰社長が辞任すると発表した。後任はスイス本社EGMオンコロジー事業部門責任者のダーク・コッシャ氏となる。
【社長交代の背景と影響】
これは、同社の第三者調査委員会が2日、白血病治療薬「タシグナ」の臨床研究において患者情報を不正入手したり副作用情報を報告しなかったりした行為が、個人情報保護法や薬事法違反に当たる恐れがあると指摘したためである。
同社は第三者調査委員会の調査が終わる夏までの間、医師主導臨床研究への奨学寄付金の拠出を一時中断するとしている。
なお、昨年の夏に問題となった同社の高血圧症治療薬「ディオバン」に関しては、厚生労働省が薬事法の誇大広告にあたるとして、先月ノバルティス社を刑事告発し、東京地検により捜査が行われている。ブルームバーグによれば、ディオバンに関する臨床試験の論文は、データに問題があるとして、欧州心臓病学会により撤回処分になっているという。
【日本は異質?】
「責任を持って法令を順守し、倫理的に事業を遂行」できる、経験豊かな新経営陣によって、新たにノバルティスファーマを立て直す、とスイス本社のデビッド・エプスタイン社長は述べる。日本法人社員の行動は「ノバルティスの倫理基準に反するものです」として、「他国と比べて医師を優先する傾向」を、患者優先の方向に変える必要がある、と語ったという。
さらにエプスタイン社長は、日本は製薬会社と医療・研究機関が密接に協力し合う、世界的にも異質な社会であると述べた、とウォール・ストリート・ジャーナル紙(以下、ウォール紙)は伝えている。
【同社の世界的なイメージ】
ウォール紙によると、同社は日本で起こしたのと同様に、イメージダウンにつながる問題を海外でも起こしているという。
今年初め、ニューヨーク州司法長官は、鉄過剰症治療薬の販売におけるキックバックのスキームに関して、ノバルティスのアメリカ法人を起訴した。中国では、数百の病院で同社の現地スタッフが医師を買収したとの疑惑が持ち上がっている。
ウォール紙によれば、同社の評判にとっての最大の汚点は、昨年2月に退任したダニエル・バセラ元会長に対する退職金問題だった。これは当初、向こう6年で最大7800万ドル(約73億円)を支払うというものだったが、投資家や一般から批判され大幅に削減されたという。
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