ジャパンディスプレイ上場も、なぜ株価振るわず? 収益性への懸念だけでない、海外紙の分析とは

 スマートフォンなどに使われる中小型液晶パネルの出荷額で世界最大手のジャパンディスプレイが、19日、東京証券取引所に株式を上場した。

【ジャパンディスプレイとはどんな会社か】
 9インチ以下の中小型液晶パネルで、ジャパンディスプレイは、世界トップの16.2%のシェアを持つ。アップルのiPhone 5s・iPhone 5cにも、同社の液晶パネルが使用されている、とウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。パネルの生産は国内で行っている。

 2012年4月、日立製作所、東芝、ソニーの中小型液晶パネル子会社が統合され、同社が誕生した。その際、中心的役割を果たしたのが、産業革新機構という官民合同の投資会社だ。国際競争力のある次世代産業を育成するため、先端的、またはボーダーレスな企業に対して、投資を行っている。機構は、ジャパンディスプレイの設立にあたって、2000億円を出資した。

【ジャパンディスプレイの収益構造】
 ジャパンディスプレイの発表によると、昨年4月から12月までの当期純利益は、約335億円であった。また、今年度全体での純利益を366億円、売上高を6234億円と予想している。

 ブルームバーグによると、同社の売り上げの約32%は、アップルとの取引によるものだ。また、Xperiaブランドでスマホ・タブレット端末を製造するソニーが、9.4%を占めているという。

【今月行われた新規株式公開で、早くも先行きに不安が】
 上場に先立ち、ジャパンディスプレイは今月、およそ3億5千万株の新規株式公開(IPO)を行った。このうち、新規株式は1億4千万株で、その他は、産業革新機構、ソニーなどが保有する株式だった。

 投資家から申し込みを募るにあたって、応募の際の価格の範囲「仮条件」は、900~1100円に設定された。高い価格での応募が多ければ、最終的に決定する価格も高くなり、それより低い価格で応募した人には、購入資格がなくなる。

 しかし、ロイターによると、この公開は、海外の投資家から、気乗りしない反応で迎えられた。そのため、高い値段での注文が集まらず、実際の売買価格である公開価格は、下限の900円に定められた。なお、ジャパンディスプレイは、このIPOによって、1260億円を調達した。

 海外投資家は、液晶パネルの価格の、最近の低落傾向に懸念を抱いていた、とロイターは分析する。世界全体で、スマートフォン市場が飽和に近づきつつあるため、需要の伸びが鈍化し、また、販売価格も下がりつつある、とブルームバーグは報じている。

【いよいよ東証上場、しかし直後に大幅下落】
 19日、ジャパンディスプレイは、東証に株式を上場した。ところが、そこで付いた初値は、IPOでの公開価格を15%近く下回る769円だった。

 CNETは、そもそもIPOでの価格設定が間違っていたのだ、という専門家のコメントを紹介している。

 東証の関係者は、下落の原因として、ジャパンディスプレイの収益性への懸念もあるが、それ以上に、市況が望ましくない状態だったせいだ、と語ったとロイターが伝えている。

 実際、前日の18日には、日立マクセルが東証1部に4年ぶりに再上場したが、その初値は、IPOの公開価格を5%下回るものだった。終値では、公開価格を14%下回っていた。これにより、「ジャパンディスプレイに関しても、同じことが起こるのではないか、という空気が大きくなり、売り注文が先行したのです」と、SBI証券の上級アナリストの藤本誠之氏は、ロイターに語っている。

 また、海外の投資家は、規制緩和の進み具合に不満を抱いており、消費税引き上げの影響も心配している。そのため、彼らは、東証での取引から大きく遠ざかっているようだ、と東証関係者が語ったという。ロイターは、東証において、海外からの投資が著しく落ち込み、そのせいで薄商いが続き、値動きが悪化している、と伝える。

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Text by NewSphere 編集部