三井住友FG、前年比53%増で過去最高益 今後の戦略は?

 三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)は11月、上期(4~9月)の純利益が前年比53%増、5050億7000万円となったことを発表した。半期分としては、11年に及ぶ同グループの歴史の中で最高額だ。国内経済の回復と、投資信託や金融商品の販売を扱う事業の好成績が手堅い利益を生んだようだ。

 SMFGの宮田孝一社長は、海外紙のインタビューで「日本とアメリカの経済が上向いていることは間違いない。来年も株の強気市場が続くことを期待している」と語り、好調な株式投資からの利益が、「企業への融資事業が有価証券市場の回復に追いつくまで、銀行の経営をすすめる助けとなるだろう」と見通しを立てている。

【国債の保有率を最小限に】
 宮田氏は、20日のインタビューで、SMFGは国内取引の担保として必要最小限の国債を残し、収益を国債売買益に頼ることをやめたと話した、とブルームバーグが報じている。

 デフレ下で、国内の銀行は、企業への貸出を拡大するよりも国債に投資してきた。しかし安倍政権のインフレ政策の一環として金利を引き下げた日本銀行が、これまでで最多の国債を買い進めた時点で、各機関は国債を手放し株への投資に経営の重点を移したという。SMFGは9月末までに、日本国債のポートを2012年の同月比で47%圧縮し、14.7兆円とした。

 宮田氏は、「日本のイールドカーブ(利回り曲線)が、インフレと明るい成長見通しを反映するようになれば、国債の保有率を上げるつもり」だが、「現在の国債の保有額は、SMFGの株関連の有価証券比率増加とともに、ちょうど好ましい状態になっている」と語ったという。

【海外での事業拡大・アジア】
 国内の各銀行は、株の売買と手数料業務から利益を稼ぐ一方、超低金利の中で、国内企業への融資では利益を上げることにいまだ苦労している、とウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。また企業側も、設備投資のための借り入れに難色を示している。結果として、銀行は、海外での事業に目を向けることになった、と同紙は指摘している。

 このような日本の金融機関の動きは、特に東南アジアで活発なようだ。宮田氏も同地域での事業拡大に期待を示している。

 SMBCは5月、インドネシアの金融機関バンク・タブンガン・ペンシウナン・ナショナルの株式40%を15.2億ドルで買い取ることに同意した。宮田氏は、「インドネシアでは、消費者の車や電気機器などに対する購買意欲が旺盛で、1960年代から70年代の日本が急速な経済成長を遂げた時期によく似ている」と話したという。さらにSMFGは、ベトナムで自動車ローンなどの消費者信用事業を始めたほか、タイでも事業に参入した。同氏は、「その国の経済発展や法整備の進捗度にもよるが、インド、ミャンマー、カンボジアでも事業を検討している」と語っている。

【海外での事業拡大・欧米】
「世界的金融機関が今後、さらに資産を売りに出すのではないかとみている。特に、ヨーロッパの銀行は、資本を構築するために保有する資産を手放す動きが続いている」との宮田氏の予測を、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。同紙によると、ここ数年、日本の金融機関がヨーロッパ金融機関の資産買収をすすめているという。

 SMFGは2012年、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド(RBS)から、航空機レンタル事業を72億ドルで買収。三菱東京UFJ銀行(MUFG)は2013年6月、ドイツ銀行 AGから、不動産賃貸のポートフォリオと、プラットフォームを買収した。オリックスも同年7月、ラボバンクグループの資産管理部門、ロベコを約26億ドルで買収している。

 宮田氏は、買収は安定した利益が見込まれるというだけでなく、東京に拠点を置く貸手が買収された事業の取引先との関係を検討することができると説明している。

Text by NewSphere 編集部