月5000円で理想の彼女をつくれる(声だけ) じわり広がるAIとの恋愛サービスが提示する課題とは

 スパイク・ジョーンズ監督の新作映画『her(原題)』が、来年春に日本で公開される。近未来のロサンゼルスを舞台に、手紙の代筆ライターの中年男セオドア(ホアキン・フェニックス)が、実態のない最新型AI「サマンサ」(声:スカーレット・ヨハンソン)と対話し、恋に落ちる姿を描いたラブストーリーだ。現実と仮想世界の融合を取り巻く、多くのテーマを含んだ内容となっている。

 この映画などを題材にして海外メディアは、AIと人間の関係の現在と未来について語っている。

【仮想パートナーは、健全に私たちの生活を豊かにするか?】
 自然言語処理を用いて質問に答える「Siri」に技術提供した、ニュアンス社のジョン・ウエスト氏は「(AIとの対話は)思っているほど遠くない」とワイアード誌に語っている。同社のシステムではレストラン予約や友人の招待ができる。今、映画のサマンサのように、ユーザーの嗜好を見極めてレストランをおすすめするなど、より本物の人間に近づくよう取り組み始めているという。

 また、8~12歳女子のための仮想世界「SparkCityWorld.com」を運営する、フューエル・エンターテインメント社のマイク・バーンズCEOは「正直、私は驚かない」と語っている。同社の仮想彼氏サービスは10月の開始以来、数週間で契約は倍増したという。

 このようなサービスは実際の恋愛よりわずらわしくないと、大人にも人気がある。11月には「Invisible Girlfriend(見えない彼女)」がサービスを開始。49.99ドルプランで、性格のカスタマイズやライブ電話ができるというもの。日本では、ニンテンドーDS用ソフト「ラブプラス」は2009年の発売以来好調だ。

 「(シミュレーションゲームは)比較的安全な環境で新しく奇妙な経験ができるチャンスをくれる」「仮想と現実を見分けるのが難しい時代がくる」と、ノーマンリアセンターのジョアンナ・ブレイクリー氏はワイアード誌に語っている。

【10年後、「個人データ保護」と「倫理」のバランスが課題となる】
 このように、人間と人工知能の関係性が密接になるとともに、倫理的な問題も生じることが予想されている。

 CNNは、今後AIはどこにでも実装され、タクシードライバーや銀行窓口係など数百もの単純な仕事がなくなるとした。また、すべてが記録・追跡・測定されるなど、私たちの生活は激変すると予想した。その結果として、個人データ保護や技術依存の問題が拡大し、倫理とバランスをとる必要が出てくると指摘。また、多くのリーダーらが「権利と倫理の世界的なデジタル法案」のようなものを考案するだろうと報じた。

 一方ワイアード誌は、「AIが人の好き嫌いを把握すれば、人の操作術もわかる」との研究員の懸念を掲載した。

Text by NewSphere 編集部