ネット販売だけじゃない、薬改革 インドからジェネリック医薬品輸入へ?

 日本の大手製薬会社、第一三共株式会社は、2008年に買収したインドの後発医薬品(ジェネリック医薬品)大手ランバクシー・ラボラトリーズのインド工場から、日本へ向けて医薬品を供給することを計画している、と関係者が18日、明らかにした。

 厚生労働省からの承認をまだ受けていないが、日本国内で同社の後発薬販売の足がかりを確保し、収益の安定を強化することが狙いのようだ。ランバクシーの広報担当者によると、日本で販売する商品の選定は終わっているという。

 インドの工場と、販売開始の時期についての詳細は明らかになっていない。

【日本のジェネリック医薬品市場】
 日本は、安定して年間約900億ドルという世界で2番目に大きい医薬品市場を持つ。しかし、後発薬を販売する企業は、厳しい法規制のために、苦戦しているようだ、とインドのビジネス・スタンダード紙が報じている。政府は、市場での後発薬の割合を拡大するため、改革を進めてきたが、2010年の18%から、2013年までに30%までにしか数字を引き上げることができていない。ただ、それだけに伸び代は大きいと期待されているようだ。

 専門家は、第一三共との連携がうまくいけば、ランバクシーは、日本での後発薬販売において、またとない機会を得るだろう、と話す。

【第一三共によるインド後発薬企業買収の背景】
 2008年は、ランバクシーにとって、重要な転換期だった、インドのエコノミック・タイムズ紙が報じている。このとき、ファイザー製薬のアトルバスタチン(商品名「リピトール」)の特許失効の時期が近づいていた。アトルバスタチンはコレステロールを下げる薬で、約110億円の市場を持つ。ランバクシーは、アメリカで最も早くその後発医薬品の製造許可の申請をし、アトルバスタチンの後発薬販売において圧倒的優位に立つとみられていた。

 第一三共は、後発薬のアメリカでの販売が近づいたため、その利益を見込んで買収を急ぐ決断をしたようだ、と同紙が報じている。

 しかし買収を決めた直後、ランバクシーのインド国内のアメリカ向けの3つの工場が、米食品医薬品局(FDA)の調査を受け、現在アメリカ国内では販売を禁止されている。

 これに対して第一三共は、買収に際してランバクシー側がこの事実を隠していたと指摘。前任の経営者に対して損害賠償を請求しているとみられることが、インド新聞により報じられている。

【「根回し」が不十分だったのでは?】
 一方インドのエコノミック・タイムズ紙は、「買収の発表の3~4ヶ月前には、当時のランバクシーの最高経営責任者(CEO)であったアツル・ソプティ社長を幹部に置くという考えは、第一三共側に既になかった」とし、買収の計画が第一三共の幹部たちだけで決められた、とインド側関係者の不満を取り上げている。

 同紙は、買収の際、日本企業の慣習である「根回し」が十分にされなかったのでは?と第一三共による買収を強引だったとみているようだ。

 また、根回しと並んで日本式のビジネスで重要なのは、「信頼」だとし、インドに進出する日本企業の担当者から、「インドの製薬会社の就業規則はとてもいい加減なのか?」「インドの経営者を信用してもいいのか?」などの質問が頻繁に聞かれることを、残念にみているようだ。

Text by NewSphere 編集部