絶好調トヨタ、しかしアジアの売上は停滞 海外紙は課題山積みのアジア戦略を指摘
トヨタ自動車は6日、円安とアメリカでの堅実な販売を背景に、2014年3月期の連結純利益(米国会計基準)の予想を、1.48兆円から1.67兆円に上方修正すると発表した。この数字は、過去最高を記録した2008年3月期の1.72兆円に迫るものだ。営業利益は67%増の2.2兆円、売上高は1兆円増の25兆円になる見通し。ただし、年間の販売台数予想は910万台と据え置いた。
【トヨタ好調の要因は、円安の恩恵と世界経済回復の波】
トヨタは世界的な経済回復の波に乗った、とフィナンシャル・タイムズ紙が報じている。特にアメリカでは、個人の消費意欲が向上し低金利が売上を押し上げたようだ。実際、北米では、前年同時期の6ヶ月間に比べ、販売台数が3.7万台増加し130万台となった。
また同紙は、トヨタが国外での販売拡大を進める中で、安倍晋三首相のすすめる金融緩和策による円安で、最も恩恵を受けた企業のひとつだ、と指摘している。実質的な輸出量の増加ではなく、円安による海外売上額の増加による大幅な利益増額だからだ。実際、販売台数は前年同時期に比べ4.8万台少なかったという。
【国内生産拠点を維持したこともプラスに】
トヨタは、2008年の金融危機以来、日本の大手自動車企業の中で唯一上方修正した企業だ。
しかしながら、他社に比べ国内生産の多いトヨタは、これまで苦戦してきたとブルームバーグは報じている(例えば日産は全生産の4分の3以上が国外という)。2011年10月には、1ドル=75円の最高値を記録するなどの円高により輸出は停滞。また同年の東北大震災の影響で、他社に比べて部品供給がなかなか回復しなかった。
風向きが変わったのは2012年末。安倍首相がこれまでにない金融緩和を行うと発表したため円が下がり始めたのだ。これにより国内に多くの生産拠点を持つトヨタは、大きな恩恵を受けた。
なおトヨタの小平信因副社長は、円安による部分も認めながらも、さらなる経費削減へ取り組み、通貨の変動に影響を受けない強い体質を目指すと語ったという。
ブルームバーグは、今後の経済について「円安の効果は、次第に薄れている」「円安がさらに進めば輸出での利益は増加するだろうが、実質的な経済の方向はアメリカの景気次第だ」との専門家の意見を取り上げている。
【アジア地域では課題山積みと指摘】
一方、国内を除くアジア地域では売上が伸び悩んでおり、年間予想に暗い影を落としたとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。
中国では、日中関係悪化や販売競争激化の影響で、前年の84万台から6万台減少。さらにフィナンシャル・タイムズ紙は、タイで車購入についての減税制度が打ち切られたことも背景に挙げた。他にも、競争力のある小型エコカーをタイで販売していないことや、インドネシアでの競争の激化、インドでの需要の停滞など、様々な課題があると指摘している。