アベノミクスは日本企業を救えているか? 明暗分かれた上半期決算
日本企業が上半期の決算報告を発表する時期だ。アベノミクス円安に伴い、自動車メーカーなどの記録的好調が報じられているが、明暗は分かれている。
【絶好調のトヨタ】
6日に決算報告を発表するトヨタ自動車は、ブルームバーグがまとめたアナリスト予測によると、半期利益9553億円(74%増)と記録的な好調である。トヨタ自身の通年利益予想は1兆4800億円だが、アナリスト予想では1兆8200億円に達しており、下期の為替予測次第でトヨタは利益見通しを引き上げるだろうという。
同社は欧米での利益予想も好調だが、中国での尖閣問題に起因する不買運動が沈静化しつつあり、専門家は「緊張がエスカレートしない限り、中国で上向きのサプライズの余地があります」と予想している。国内でも、来年の消費税増税を控えての駆け込み需要が予想されている。ただし経済低迷中の新興国、タイやインドでは減益だろうという。
一方、日産自動車は通期の利益予想を15%カットしている。生産の海外移転をハイペースで行い過ぎたため、円安と中国などの景気減速でかえってダメージを受けたらしい。また10年ぶりの半期純益を報告していたソニーは「先週、驚異的な利益損失で赤字に戻った」と報じられている。
【他部門も概ね好調】
全体的にも、1日までに報告があった約500の上場グループにおいて、9月までの6ヶ月間で純利益がほぼ3倍になっていたと、フィナンシャル・タイムズ紙は報じた。
上半期に日本経済に最も貢献した部門は家電製品や家具など国内向けの耐久消費財、次いで電力部門であったという。航空、化学、鉄鋼などは円安によるコスト増のあおりを受けたものの、鉄鋼メーカーには公共投資増の恩恵があり、JFEは税引き前利益が18倍に拡大した。
【ならば株主と労働者に還元できる?】
ただし同紙によると、円安の恩恵とは実輸出の拡大というよりも、円換算での海外売上額が膨れ上がった事が主因である。
また同紙は今後の先行きについて、「日本の悪名高い現金溜め込み企業が、株主と労働者にどのくらいおこぼれを還元するかにかかっている」と評している。日本企業はいまだ将来に不安があり、一時的なボーナスは出しても賃金ベースアップには及び腰だというのだ。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、黒田日銀総裁が5日の大阪での演説で経済政策の現時点での成功を語り、関西産業界も日銀を称賛しているのに対し、アジア輸出への依存度が他の地域よりも高い関西産業界は「新興国経済の減速による逆風に直面している」と指摘している。