「宇宙葬」の進出も 日本の葬儀業界に変革の兆し
長引く不景気の中、日本では葬儀ビジネスが成長産業として注目を浴びている。高齢化に伴う葬儀件数の増加が見込まれる一方で、少子化や不景気ゆえに、低価格でシンプルなサービスの需要が伸びてきている。異業種やベンチャー企業からの新規参入も相次いでおり、今後数年間で、市場規模が2兆円を突破するとも言われている。海外からも注目を浴びている。
【米国発の宇宙葬、まずは日本から海外進出】
最近では、米国で元NASA技術者が立ち上げたベンチャー企業・エリジウムスペース社が、破格の宇宙葬サービス「Memorial Spaceflight」を開始することを発表している。従来の価格の約半分程度の1990ドル(約19万5000円)で、遺灰の一部を入れたカプセルを宇宙に打ち上げる。遺灰は数ヶ月から数年間にわたり地球の周回軌道を回った後に大気圏に突入し、「流れ星」のように燃え尽きるという。
また、新たな試みとしてスマートフォンやタブレット向けアプリを開発し、家族らはその位置を確認できるという。第1弾目は2014年夏に打ち上げ予定だ。
同社は海外進出の第一歩として、まずはポテンシャルの高い日本をターゲットに選んだことを10月1日に発表している。ウェブ上で申し込むと、特殊なアルミ製カプセルが郵送され、それに遺灰を納めて返送。希望者はフロリダ州の打ち上げに立ち会うことも可能だという。なお日本の次は、墓地の土地不足が深刻化している英国への進出を検討中だという。
【多様化で失われる日本らしさ?】
確かに日本の葬儀関連費用は高い。東京の墓地にお墓を設ける平均費用は274万円だという。この他、管理費や法事等の際のお寺へのお布施代やお花代など様々な出費がかかってくる。
これらに比べると、宇宙葬(約20万円)や海への散骨(約4万円~)などは、費用も抑えられ、実施の手間や長期的な管理もシンプルという利点があるだろう。
しかし、海外メディアでは、日本の葬儀の多様化・デフレ化の代償として「伝統の喪失」を挙げている。檀家としてのお寺との付き合いや定期的なお墓参り、親戚の集いなど、お金には代えられない日本の伝統文化があることも覚えておきたいものだ。