世界3位の東京エレクトロン、約9,000億円で買収 その裏側とは
半導体製造機器で世界1位の米アプライドマテリアルズ社と、3位の東京エレクトロンは24日、対等合併を発表した。ただし、実質的にはア社が時価総額88.5億ドルとされる東京エレクトロンを93億ドルで買収した形だと報じられている。これはシティグループが2008年までに日興コーディアルグループを177億ドルで買収して以来、外国企業による最大の日本企業買収となる。合併は来年度下半期に完了予定とされている。
それぞれのカリフォルニア本社と東京本社、およびナスダックと東証への上場はいずれも維持されるが、ア社のゲイリー・ディッカーソンCEOは東京に赴任して新会社(社名未定)のCEOとなり、同じくマイケル・スプリンター会長が副会長に、東京エレクトロンの東哲郎会長兼CEOが会長に就任する。ただし新会社はオランダに登記される。新市場発掘のためと説明されているが、実際は税率回避の狙いだと各紙は報じている。
また、東京エレクトロンの1株は新会社の3.25株に、ア社の1株は1株に換算される。その結果、新会社株の68%はア社の株主が占有する事になるが、両社はそれぞれの発言権は同等だと強調している。発表を受けて25日午前、東京エレクトロン株は14%上がった。
【苦しい半導体業界】
各紙は、性能的要求とコスト削減圧力の厳しさのため、すでに「成熟」してしまった半導体業界は苦しく、統合を強いられていると解説する。スマートフォン向けなどの需要は伸びているが、パソコン向けなどの需要は減退しており、昨年国内ではエルピーダメモリやルネサスエレクトロニクスが破綻している。両社は合併により、初年度末までに2億5千万ドル、3年目までに5億ドルのコスト削減効果を見込んでいるという。
また、両社は得意分野が異なるため、「グーグルとマイクロソフトが合併」する場合のように、重複的ではなく相互補完的なメリットがあるとも報じられている。
東氏は、10年前にも合併の話があったが実現しなかったと語っている。また、ディッカーソン氏は東氏とは30年来の知己で、3月から本格的に合併協議を開始していたと述べている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、63歳の東氏の後継問題も迫っていたと指摘している。
【今後の懸念】
各紙は、合併により顧客に対する価格発言力が増すとも報じているが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、アナリストらはそれについて懐疑的だと伝えている。
また、世界シェア25%に達すると見られる大型合併だけに、独占禁止法上の慎重な審査が予想されると各紙は報じているが、同紙はこれまた、消費者に直接影響する分野ではないのでそこまで厳しくはならない、との異論を伝えている。