「イスラム教徒向けうどん」も登場 関空のチャレンジに海外も注目
関西国際空港は8月末、イスラム教徒(ムスリム)向けのサービスを拡充して、「ムスリム・フレンドリー」となる計画を発表した。
まずは、イスラム教の戒律に基づくハラル食をうどん店「ざ・U-don」で提供開始する。なお、ハラル食は、素材として豚肉を使わないことや、調理過程でアルコール消毒も行わないことなどが求められる。今後は他の店でもサービスを取り入れていく予定だという。
また、1日5回のお祈りを行うムスリムのために、祈祷室を現在の1ヶ所から3ヶ所へと増設する。
【ムスリム・フレンドリーのねらいとは】
背景には、東日本大震災や外交問題を抱える中国からの来日者数の減少がある。新たなターゲットとして、ムスリムに目を向けたのだ。
特に、昨今の経済発展や格安航空会社(LCC)の就航などにより、ムスリム人口の多い東南アジア諸国からの来日者が大幅に増加している、とビジネス系オンラインメディア「Quartz」は報じている。2012年に来日した外国人837万人のうち、78万人が東南アジア諸国からだったという。日本はこれを2016年までに200万人に引き上げたいと意気込んでいるようだ。実際、2013年7月時点では、インドネシアからは前年同期比43.1%増の7万3300人、マレーシアからは同17.5%増の8万1400人が来日しており、今後も増加に期待が寄せられている。
【歓迎の声】
世界に約18億人いると言われているイスラム教徒。このムスリムを含んだコミュニティにおける商機は大きい。しかしながら、サービスの改善とはいえ、関空の動きに対しては各方面から賛否両論が挙がっている。
関西空港の利用者数が、2011年から12年の間に70%も急増したイスラム国家インドネシアでは、日本におけるムスリム対応の強化を歓迎する記事が多く出ている。
食事情もさることながら、これまで関空に祈祷室が1ヶ所しかなく、多くの人々がトイレで祈祷を行っていたと、現状の不便さをインドネシアの「antaranews.com」は報じている。同サイトは、関空が2014年3月までには祈祷室をさらに2ヶ所増設し、現在の30平米から270平米に拡大していくことに注目している。
また、イランのIRIBラジオは、日本全体が東南アジアからの来日を誘致していく方針であり、関空の動きはその第一歩であるとみている。
【思わぬ批判】
一方で、イスラム圏以外の読者の多いニュースサイト「Japan Today」では、批判的な読者コメントの投稿も少なくないようだ。
中には、特定の宗教だけを優遇するのは不公平だと訴えるカトリック教徒の声や、有料施設ならともかく公共の施設で利用者全員が支払っている空港税が使われているとしたら納得がいかない、などという意見もみられた。