中身は同じAIなのに、男性型のほうが報酬が多かった 実験で浮かんだ格差

女性型AI「ヨハンナ」(左)と男性型AI「ヨハン」(右)。(画像:Cuber et al., 2026 / CC BY 4.0)

AIアシスタントの外見や声に、人間社会のジェンダーに関する偏見が持ち込まれる可能性がある。新たな研究で、男性型のAIアシスタントに対し、女性型よりも多くの金銭的報酬が割り当てられる傾向が確認された。両者は同じ言語モデルを使用しており、基本的な機能に違いはなかった。

◆人間らしいAIに高い報酬
この研究は、スイスのチューリヒ大学やアイルランドのリムリック大学などの研究者によって行われた。研究チームは189人の参加者を仮想現実(VR)のオフィス環境に配置し、AIアシスタントと協力して仕事上の課題に取り組んでもらった。

実験では、テキストベースのチャットボット、据え置き型のデスクロボット、人間に似せたAIアシスタントの3種類を使用した。人間型には男性の姿と声を持つ「ヨハン」と、女性の姿と声を持つ「ヨハンナ」を用意し、参加者はいずれか一方と協働した。すべてのAIには同じ言語モデルが使われていた。

各タスクの終了後、参加者はAIへの信頼度や貢献度を評価するとともに、最大4スイスフランの報酬を、自分が受け取る分とAIに割り当てる分に振り分けた。AIへの配分額は、その開発資金に充てられる仕組みだった。

その結果、人間型のヨハンとヨハンナには、デスクロボットやチャットボットよりも多くの報酬が割り当てられた。実験後のインタビューでは、人間型AIについて「同僚が隣に座っているように感じた」などの声があり、親しみやすさが報酬配分に影響した可能性がうかがえた。

◆男性型AIに多くの報酬 能力は同じなのになぜ?
さらに、同じ言語モデルを使用しているにもかかわらず、男性型と女性型のAIの間にも報酬の差が生じた。

男性型のヨハンに割り当てられた報酬は平均2.96スイスフランだったのに対し、女性型のヨハンナは2.54スイスフランにとどまった。この差は統計的に有意だった。

一方、信頼度や貢献度評価には有意な差が確認されなかった。ただし、人間らしさについてはヨハンのほうが高く評価されていた。

興味深いのは、参加者の言葉と実際の行動が必ずしも一致していなかったことだ。実験後に行われた34人へのインタビューでは、30人がAIの性別によって信頼度や報酬は変わらないと答えた。しかし、実際の報酬配分には差が生じていた。

研究者たちは、AIの見た目や声といった特徴が、能力とは別に評価や報酬配分に影響する可能性があると指摘する。ただし、今回の報酬差が性別に対する偏見によるものなのか、人間らしさの感じ方などによるものなのかは、明確に区別できていない。

◆既存の不平等が引き継がれる? 導入に課題
研究の共著者であるリムリック大学のメアリー・ハウスフェルド博士は、人事専門メディア「ヒューマン・リソーシズ・ディレクター」の報道で、私たちはAIを中立的な存在と考えがちだが、システムの設計や提示の仕方によっては、人間同士のやり取りに存在するのと同じような思い込みや偏見が引き起こされる可能性があると述べている。

同氏は、職場でAIエージェントが一般的になるにつれ、どのような特徴を与え、その選択が人々の行動にどう影響するかを慎重に考える必要があると指摘。新たな技術環境で、既存の不平等を意図せず再現することは避けなければならないと訴えている。

Text by 山川 真智子