学校が終わると、10歳の少年イムラドゥル・アリ君は急いで家に帰り、制服を脱いで、インドのはるか北東部で「スカベンジャー(くず拾い)」としての仕事にとりかかる。

麻袋を持った彼が向かったのは、アッサム州の州都ガウハティのスラム街にある埋め立て地だ。ここで、他人の家から出たゴミの山の中からペットボトルやガラスなど、リサイクル可能なものや売り物になりそうな品を探し出し、回収する。少年の周りでは、牛たちが餌を求めてゴミをあさっている。

AP Photo / Anupam Nath

アリ君の家族はみなスカベンジャーだ。両親も兄も、同じ仕事で生活費を稼いでいる。彼がここで働き始めたのは1年以上前。少しでも家計の足しにするためだ。

昨年、新型コロナウイルスのパンデミックが発生すると、彼らは生きる糧である、「埋め立て地に行ってゴミの中から売れるものを探す」ことができなくなった。インドでは数ヶ月にわたってロックダウンが続き、一家も厳しい時期を過ごしたが、支援組織の助けを借りてなんとか食料を得ることができた。

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アリ君は一生この仕事をしたいと思っていないが、先行きは見えていない。
「僕は学校に通い続けたいし、お金持ちになりたい」と彼は言う。

彼は1日に最大100ルピー(約144円)を、残りの家族はそれぞれ約250ルピー(約360円)を稼ぐ。

アリ君の母親、アヌワラ・ベガムさんは「くず拾いで家計を支えるのは非常に苦しい」とこぼす。

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くず拾いは不潔で危険な作業だ。正確な数は不明だが、支援団体によるとインドでは約400万人がスカベンジャーとして働いているという。インド国内の主要なリサイクルシステムは彼らに支えられているわけだが、環境は劣悪だ。彼らはほとんど権利も与えられず、毎日命に関わる毒にさらされている。

2011年にインドで実施された最新の人口調査では、5歳から14歳までの児童労働者(スカベンジャーを含む)の総数は約1000万人にのぼっている。

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慈善団体Snehalayaを運営するタデウス・クジュール氏は、子どもたちが学校に行く代わりにくずを集める姿を見るのはいつも悲しい、と語る。団体は5つの保育施設を運営し、185人の少年と少女のケアにあたっている。7年間で支援してきた子供の数は2万人を数えるという。「私たちは貧困家庭の親御さんを対象に、就学前教育の価値を理解してもらうための“動機付けプログラム”を実施しています」と彼は語る。

世界銀行グループおよび国連児童基金の最新分析によると、パンデミック以前でも6人に1人、つまり全世界で3億5600万人の子どもたちが極度の貧困状態にあり、その数は大幅に悪化すると予測されている。

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アリ君の父親は、「息子には学校に通い続けてほしい」と願っている。そして彼がいつか自分の店を持つか、誰もが熱望する政府の仕事に就き、一家の苦しみを終わらせてほしい、と望んでいる。

アリ君は運転がしたいし、いつか車を持ちたいと思っている。
「おいしい食べ物と服が欲しい」と彼は言う。


インド、ゴウハティ(AP)