同じ商品なのに人によって値段が違う? 米国で広がるAI価格設定への不安

アメリカ・オハイオ州モンローのスーパー「クローガー」に設置された電子棚札|Jeff Dean / AP Photo

アメリカで、AIを活用した商品価格の設定が広がり、消費者の間に不安が生まれている。同じ商品でも買う人によって価格が異なるケースが確認され、個人情報を利用した値付けへの警戒感も高まっている。

スーパーでは紙の値札から電子棚札への切り替えが進み、企業は人工知能(AI)を使って需要や消費者の反応を予測できるようになった。航空券やホテルの料金が変動することには慣れていても、日々の買い物まで複雑なアルゴリズムに左右されることに、戸惑う消費者は少なくない。

◆同じ商品なのに最大23%の価格差
消費者団体コンシューマー・リポートなどが2025年に実施した調査では、食料品配達サービス「インスタカート」の利用者437人が、同じ店舗の同じ商品について異なる価格を提示されていたことがわかった。

商品によっては最高価格が最低価格を23%上回り、同じ買い物かごに入れた商品の合計金額にも平均約7%の差が生じていた。

インスタカートはその後、価格を変える試験を終了した。同社は、利用者を無作為にグループ分けした試験であり、個人情報に基づいて価格を設定したわけではないと説明している。

大手小売業者ターゲットでも、アプリの価格表示が問題になった。カリフォルニア州の検察当局は2022年、顧客が店舗に入るとアプリ上の価格が引き上げられる場合があったなどとして同社を提訴。ターゲットは500万ドルの民事制裁金の支払いを含む和解に応じ、位置情報を利用した値上げを禁止された。

ただし、同社は顧客の個人データや行動に基づいて価格を設定していたわけではないと説明している。

◆電子棚札の普及で高まる懸念
こうした不安の背景には、価格を瞬時に変更できる技術の普及がある。

アメリカのウォルマートやホールフーズなどでは、紙の値札を電子的に更新できる「電子棚札」の導入が進んでいる。

消費者団体などは、需要が高まったときの値上げや、個人別の価格設定に使われる可能性を懸念する。

しかし、電子棚札の導入が直ちに頻繁な値上げにつながるわけではない。AP通信によると、あるスーパーを対象とした研究では、導入後も需要に応じた急な値上げはほとんど確認されなかった。

ウォルマートのジョン・ファーナー最高経営責任者(CEO)も9月の声明で、電子棚札は作業の効率化や価格表示の正確性向上が目的だと説明した。

「私たちが価格を設定するのは商品であって、人ではない」と強調し、顧客の収入や購買履歴、時間帯によって価格を変えることはないと明言した。

◆AIはどこまで価格を決めるのか
一方、消費者の所在地や収入、ウェブサイトの閲覧履歴などを利用し、個人や顧客層に異なる価格や割引を提示する「個人別価格設定」も注目されている。一部の規制当局や消費者団体は、これを「監視型価格設定」と呼ぶ。

アメリカ連邦取引委員会(FTC)が2025年1月に公表した調査結果によると、個人に応じた価格や販促内容を設定できるツールの提供事業者は、食料品や衣料品の小売業者を含む少なくとも250社と取引していた。

AIは販売データや競合他社の価格を分析し、需要や利益を予測するためにも使われる。コンサルティング会社サイモン・クチャーが28か国の企業幹部2200人以上に実施した調査では、28%がリアルタイムの価格最適化にAIを利用していると答えた。

もっとも、こうした技術が小売業界全体でどこまで普及しているかは明らかになっていない。

規制当局も対応を進めている。FTCは2026年8月、個人情報を利用した価格設定について、その事実や利用データを消費者に適切に開示しなければ、消費者保護法に違反する可能性があるとする執行方針案を公表した。

AIによる価格設定が高度になるなか、企業がどのような情報を使って値段を決めているのか。その透明性が、消費者の信頼を左右する問題になっている。

(AP通信の記事を基に、情報を補足・再構成)
By DEE-ANN DURBIN and ANNE D’INNOCENZIO AP Business Writers

Text by AP