日韓に苛立つ米国 「歴史に固執」する韓国、「外交下手」の日本を有識者非難

 韓国の安豪栄(アン・ホヨン)駐米大使は19日、米ヘリテージ財団に赴き、日本が従軍慰安婦の扱いを含む過去の間違いを「適切に誠意を持って」認めなければ、関係改善は難しいと述べた。

 これに対し、財団の専門家らは、日韓が歩み寄らないことに苛立ちをみせたようだ。日本も韓国も民主主義国家で、経済的に強いつながりを持ち、同じように北朝鮮の核の脅威に晒されている、と共通の利害があることを指摘した(AP)。

【日韓ともに非がある】
 AP通信によると、米専門家は、日韓の対立は双方に落ち度があると判断している。ヘリテージ財団の上席研究員のブルース・クリングナー氏は、「アメリカ政府は、両友好国に不満を募らせている。日本はずれた感覚の不器用な外交で歴史問題に対処しようとし、一方韓国は、何もかもを過去というレンズを通してでしか見ようとしない」(AP)と厳しい発言をした。

 同氏は、日本帝国の行った残虐行為の証拠は「明白で圧倒的だ。日本政府の責任を疑う日本人は、歴史的に間違っており、道徳的に非難されるべきだ」と述べた。しかし、同時に、韓国も「防衛方針を妨げるような感情的な国家主義」を続けるべきではない、としている。韓国は「形の定まらない誠実さ」を要求するよりも、日本に求めているように自国も明確な行動を示すべきだ、と助言した(AP)。

 またウェブ外交誌『ディプロマット』は、安倍政権の防衛方針転換を支持する元米国家情報長官のデニス・ブレア氏が、日本について「1930年代の軍国主義と混同してはいけない。現在の日本は、それとは遠くかけ離れている」と述べたことを報じている。

 韓国の駐米大使、安氏は、両国は現在の緊張関係から脱することはできると述べたが、首脳会談開催は当面難しいともみている。もし、首脳会談開催が発表されれば、当然、関係が改善されるのではとの期待が膨らむものだ。しかし、そのような期待を持てない現在の状況での首脳会談は、不満を誘発し、その不満が逆に日本と韓国の関係を悪化させる方向に働いてしまうからだ、と説明している。「そのため(今は会談開催のための)前準備をする段階ではないと思う」「誰もがそう感じているだろう」(聯合ニュース)と述べている。

【米政府の苛立ち】
 日本と韓国には、合わせて8万人の米軍兵士が駐在している。地域との結びつきを強め防衛システムを固めたいアメリカ政府は、日韓関係の悪化に憂慮を深めている。

 ディプロマット誌は、日韓両国とも関係改善に興味を示していて、米政府が影響力を行使してでも、その動きを後押しする必要がある、と主張している。両国間では常に問題が起き、お互いを全般的に疲弊させている。それが積もり積もって、アメリカとの協力関係をも損ない始めていて、米政府は解決の必要に迫られているという。

 影響力の大きな財団の専門家らが口にした苛立ちは、現在の米政府の見方を反映したものだろう。北朝鮮の核の脅威、中国軍の拡大、またその中国海軍が日韓の言い争いで防衛力を削がれている地域へ進出し複雑化している環境など、アメリカはその対応に苦慮している、とディプロマット誌は報じている。 

 米国務省報道官は19日、日韓関係は「両国、地域、そしてアメリカの最も重要な利益となるものだ」日韓は話し合いをすすめ、将来を見据えた関係を建設することを期待する(聯合ニュース)、と促した。

【安倍首相と朴大統領の個人的関係も】
 聯合ニュースは、米専門家が、日本と韓国はそれぞれの真意を伝える「信頼できる窓口」として特使を交換し、緊張の続く両国関係の改善を図るよう提案したことを報じている。

 ブレア氏は、首脳同士の個人的な結びつきも重要だ、と助言している。「(国家間の)提案が適切なものか事前に様子を見るためにも特使は必要だ」(聯合ニュース)

 また、同氏は、公的に発表される言動は間違った解釈をされやすいとしている。「真の意図は信頼できる窓口を通して伝えられる必要がある。国の首脳と側近は、事態を掌握し行動していることを示そうと、逐一メディアに伝えたい欲求を抑えるべきだ」(聯合ニュース)

 8月、韓国の新しい駐日大使に柳興洙(ユ・フンス)氏が就任した。同氏は、子供時代を京都で過ごし、日本語も流暢だ。数人の首相経験者や元閣僚と親交があり、ディプロマット誌は、「韓国との冷え切った関係を正常化する役割を引き受けたい」との日本経済新聞に掲載された同氏のコメントを紹介している。柳氏は、安倍晋三首相やその父親で元外務大臣の安倍晋太郎氏とも顔見知りだという。

Text by NewSphere 編集部