フランス人はなぜウレタンマスクをしないのか?

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◆日本のマスク規格と性能基準は?
 では、日本ではどうだろうか? 全国マスク工業会(JHPIA)は、マスクの種類を、防塵規格マスク、医療用マスク、家庭用マスクの3つに分けている。すでに書いたように、防塵マスクについては、日本独自の検定規格が存在し、医療用マスクについては米国規格を使っている。一般人に最も身近なマスクは家庭用マスクだろうが、これについても性能規格基準は存在しない。

 ただし、全国マスク工業会に加盟している企業のマスクは、「表示にルールを設け(中略)統一の試験方法を定め、捕集性能を評価している」(朝日新聞)。全国マスク工業会は、家庭用マスクを、花粉対策用、風邪・ウイルス対策用、PM2.5対策用と分け、フィルタ捕集効率を表記するものと定めている(JHPIA)。

◆花粉対策用マスクはウイルスにはザル
 繰り返しになるが、花粉粒子は約30㎛、風邪などの原因になる細菌が約3㎛、ウイルスが約1.7㎛、PM2.5が約0.1㎛と、そのサイズの差は太陽と地球よりも大きい。つまり、日本の「花粉対策用マスク」は、ウイルスに対してはザルとなってしまう。そうして、ウレタンマスクはほとんどが花粉対策用なのだ。ウレタンマスクはフランスのカテゴリー1であるBFE90%以上の性能を満たさないため、フランスでは使う人がほぼいない。これが最初に掲げた問いへの答えとなる。

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Text by 冠ゆき