ケニア訪問は11回目となるが、これまで足を運んだのは首都ナイロビと、インド洋に面したリゾート地域が中心だった。今回の旅では、ナイロビから北へ向かい、ナイバシャとナニュキを目指した。さらにロードトリップの終盤には、ナイロビ近郊にあるキテンゲラ・ガラス工房内の、ガウディ建築を思わせる空間に滞在。本稿では、その旅の記録をフォトストーリーとして綴る。

ナイバシャ:湖畔のサンクチュアリが魅力

ナイバシャは、ケニアの首都ナイロビから約90キロ(車で2〜3時間)の場所にあり、グレートリフトバレー(大地溝帯)東部に位置する街だ。海抜1,884メートルに位置するナイバシャ湖をはじめ、火山地帯やヘルズゲート国立公園などで知られている。
ナイバシャは、ナイロビとケニア第三の都市ナクルを結ぶ主要道路沿いに位置し、トラックや乗用車が絶えず行き交う。ナイバシャからナイロビへ続く景観も、手つかずの自然というよりは大都市の延長のような賑わいを見せるが、一部の展望スポットからは、グレートリフトバレーの雄大な地形を望むことができる。

主要道路のすぐ横で羊や牛の群に遭遇することも。毛皮の販売も目にした。こうした家畜は、地域の人々の営みに欠かせない。

ナイバシャは花の生産地としても知られ、ケニアの花の輸出量の約7割がこの地で生産されている。気候や火山性の土壌が花の栽培に適しており、1960年代にオランダ人入植者によって花農園が始まった。現在では約70の農園が事業を展開し、15万人以上を雇用している。筆者は偶然、花農園のビジネスパーク内にある宿に滞在していたが、日曜日も含め、労働者を乗せたバスが頻繁に行き交う様子が印象的だった。

花の栽培は温室で行われているため、広大な花畑が広がっているわけではなく、敷地内は非常に工業的な雰囲気を持つ。殺虫剤による健康被害や過剰な灌漑といった課題も指摘されてきたが、現在では、よりサステナブルな手法への移行が進められているという。

ナイバシャでは国立公園でサファリを楽しむこともできるが、湖畔にはアニマル・サンクチュアリ(動物保護施設)もあり、より気軽に動物と出会うことができる。筆者が訪れたサンクチュアリ内には、カフェレストランやキャンプ場も併設されていた。

飲み物などをテイクアウトし、園内を自由に歩きながらシマウマなどの動物を間近に観察するという楽しみ方も可能。バイクレンタルや乗馬サファリといった選択肢も用意されている。

水際の景観を特徴づけているのが、浸水したアカシアの木々だ。写真に収めると非常にアーティスティックな光景だが、これは洪水による湖水面の上昇など、気候変動の影響が顕在化した結果でもある。

サンクチュアリに限らず、動物や自然との距離の近さもナイバシャの魅力のひとつだ。湖畔のオープンカフェやレストランには、サルやシマウマ、キリン、カバなどが姿を見せることもある。

ナニュキ:ケニア山の麓に広がる営みに触れる

ナイバシャからもナイロビからも約200キロ離れた場所に位置するナニュキは、アフリカ大陸でキリマンジャロに次いで2番目に高い、標高5,199メートルのケニア山の麓に広がる赤道直下の街だ。ナイバシャからナニュキへ向かうにつれ、景色は乾いた土色から徐々に緑へと変化していく。

道路沿いに見られる営みにも変化があり、ナイロビ〜ナイバシャ間と比べると、より素朴な地方の風景が広がる。紫玉ねぎ、トマト、ジャガイモといった農産物が定番。途中の休憩で立ち寄ったホテルでは、孔雀の姿も見かけた。

ケニア山は侵食によって生まれた険しい斜面が特徴だが、麓へと続く緩やかな傾斜が、雄大な印象を与える。日中は雲に隠れていることが多く、その全景を望めるのは早朝のみという日も少なくないという。筆者の滞在中のある日は、日中でもその姿をくっきりと見ることができた。

ナニュキ周辺には、緑に囲まれたカフェやレストランが点在する。その中でもよく知られているのが、大きな木の上に建てられたツリーハウスレストラン「Trout Tree」だ。鱒の養殖場を併設したレストランで、敷地内には白黒の長い毛が特徴的なコロブスモンキーも暮らしている。

キテンゲラ・ガラス工房:多様な造形に刺激される空間

ロードトリップの締めくくりに訪れたのが、クリエイティブな建築や彫刻、ガラス工芸で知られるキテンゲラ・ガラス工房と、同じ敷地内にある「ナニ・ワンダーランド」だ。ナニ・ワンダーランドは、ガラス作家ナニ・クローゼ(Nani Croze)が手がけたガラス作品や彫刻、ガウディ建築を思わせるモザイクや有機的な造形に満ちた、創造性あふれる空間である。

クローゼ自身も敷地内に滞在しており、敷地内のいくつかの建物はセルフケータリング形式の宿泊施設として貸し出されている。

ワンダーランドの敷地内には、バルセロナのグエル公園を想起させるインフィニティ・プールが設けられており、宿泊客は自由に利用できる。リサイクルされたガラス瓶でつくられた壁面がユニークなサウナも併設。

ガラス工房は、ナニの息子アンセルによって1990年代に創業された。レンガ造りのドーム建築がひときわ存在感を放ち、敷地内にはカフェやショップも併設されている。週末には家族連れなども多く訪れる。

自然や動物と人々の営みが密接に結びつく土地を巡ることで、大都会ナイロビとは異なるケニアの多様性に触れることができたのは大きな収穫だった。また、レジリエンス、ホスピタリティ、創造性といった、この国の魅力や可能性をあらためて実感する旅となった。


All Photos by Maki Nakata

Maki Nakata

Asian Afrofuturist
アフリカ視点の発信とアドバイザリーを行う。アフリカ・欧州を中心に世界各都市を訪問し、主にクリエイティブ業界の取材、協業、コンセプトデザインなども手がける。『WIRED』日本版、『NEUT』『AXIS』『Forbes Japan』『Business Insider Japan』『Nataal』などで執筆を行う。IG: @maki8383