ギリシャの甘い食べ物(スイーツ)といえば、ハチミツやシロップをかけたり、フルーツをあしらった『ギリシャヨーグルト』を思い浮かべる人は多いと思う。他にも様々なスイーツがある。ギリシャでは、シロップに浸したスイーツが多く、時おり、かなりの甘党でも「これは、すごく甘い!」と感じるものがある。しかし、ギリシャに行ったら、一度はこうした現地のスイーツも試して“甘い”思い出を作ってほしい。アテネで訪れたお店をいくつか紹介しよう。

創業95年の老舗 Mitropolitikon

Mitropolitikonは、1930年創業の家族経営の店。歴史を感じさせる建物の前を通りかかると、思わず足を止めてしまう。持ち帰り専用の店で、商品は、建物内の工房で毎日手作りしている。砂糖でコーティングされた艶々のミカン、チョコレートなどを挟んだボリューム満点のメレンゲ、国産ピスタチオを贅沢に散りばめたお菓子、リンゴジャムを使った可愛いらしい赤系のアーモンドパイなど、この店ならではの品々もたくさんあり、若い女性観光客が来て楽しそうに選んでいた。

ギリシャの代表的なお菓子について、3代目店主のイオルゴス・イェロントプロスさんが説明してくれた。濃厚な甘さで地元の人たちを魅了している『バクラヴァ』(トルコが発祥といわれている)は、この店には4種類ある。バクラヴァは、層状の薄いパイ生地で刻んだナッツ類を挟み、焼き上げてシロップを染み込ませる。最近は日本でも食べられるようになり、話題になっている。結婚式用だという、個別包装されたホワイトアーモンド入りのバクラヴァは特別で、アテネを訪れた要人が買い求めることもあるそうだ。

角型でゼリーのような食感の『ルクミ』は私のお気に入りの1つだ。様々な色とフレーバーがあり、ピンクのバラの風味がポピュラー。町でコーヒーを飲むと添えられることもある。

ギリシャ版マジパンとも呼ばれる、焼かないクッキー『アミグダロタ』は初めて知った。アミグダロタは、すりつぶしたりしたアーモンド、砂糖、エッセンシャルオイルなどで作られる。他のお菓子同様、バリエーションは無限で、この店では3種類のレシピで作られている。棚の一画には2種類が並んでいた。クリーム色の方はシフノス島のアミグダロタで、皮つきのアーモンドと、薬用やオイルの原料となるビターアーモンドを混ぜ、ハチミツとオレンジブロッサムウォーターで風味付けしている。一方、洋ナシ型はイドラ島発。ローズウォーターを使用し、粉砂糖をまぶし、甘くスパイシーな香りのクローブをトッピングしている。

とてもフレンドリーなイェロントプロスさんは経済学を学んだ後、パリで製菓の技術を磨き、店を継いだ。現在、イェロントプロスさんの息子さんが製造に携わっている。店の伝統はしっかりと4代目に受け継がれていくことだろう。

食べたいお菓子が見つかるカフェ El Greco

El Grecoは、店先のガラス越しに見えるお菓子がとにかくおいしそう。ギリシャのお菓子からチョコレートケーキやイチゴタルトまで、あらゆるものが揃っている。ここは以前はChatzisのアテネ店だった。最近El Grecoという名前になったが、レシピ、材料の品質、そして菓子職人は変わっていないとのこと。Chatzis本店はギリシャ第2の都市、テッサロニキ(ギリシャ北部)にあり、1908年にオープンした。  

Chatzisだった頃、数回違うお菓子を試し、どれもおいしかった。前回は、ギリシャ名物の『カタイフィ(カタイファキ)』を食べた。小麦粉と水でできた“天使の髪”と呼ばれる糸状の生地で、ナッツ類(この店ではクルミ)を包み、焼いて、シロップに漬けたお菓子だ。また、やはりシロップに漬けたギリシャの伝統菓子『サマリ』も食べた。サマリの生地は、セモリナ粉(粗挽き小麦)、ギリシャヨーグルト、マスティハ(ギリシャ産の天然樹脂)で作っている。値段は他店と比べて全体的に少し高め。店内は2階席もあって広々していて、ゆっくりできる。

ルクマデスの専門店3つ

ギリシャを訪れたら、揚げたてのドーナツにシロップをたっぷりかけた『ルクマデス』に出合うだろう。 数千年の歴史を誇る“国民的なお菓子”だ。年配のギリシャ人に聞いたところ、アテネではスイーツと見られているが、特にテッサロニキでは“単なるお菓子以上の存在”で、朝に食べたり、シエスタ(長い昼休み)後に少量取ったり、あるいは夜遅くに食べたりするそう。まるで食事のようだ。

私が初めてアテネを訪れた時に行ってみたルクマデスの店は、1923年にオープンのKrinos。ルクマデスは通常はボール型だが、この店では平たく穴が開いている。広い店内で食べることもできるし、店頭でのテイクアウトもOK。

Ktistakisは少し見つけにくい場所にある。創業者の孫(現在の店主)のトドリス・クティスタキスさんが祖父のレシピを忠実に守り続けており、1人で、毎日、心を込めて作っている。Googleでのクチコミが非常に高く、「アテネでは、ここのルクマデスが最高!」という声も聞かれるので、行ってみる価値はあるだろう。クレタ島で1912年に創業し、アテネに移った。私が行った時は空いていたが、「地元の人はいつもいらっしゃいますし、観光シーズンのピーク時には観光客で賑いますよ」とクティスタキスさんは話していた。シナモンとゴマがアクセントで、外はカリッとしているのに中はシロップが浸み込んで柔らかい様子が、写真からもわかると思う。 食べ切ることができなかったので、残りは持ち帰ってホテルで食べた。

新しいルクマデスの専門店もある。LUKUMADESは2013年にオープンして瞬く間に注目を集めたフランチャイズ店だ。2023年にはアテネ国際空港にも出店した。チョコレートソースをかけたり、アイスクリームを添えたり、ギリシャ産の様々なチーズを詰めたりとフレーバーが豊富で、自分好みにカスタマイズできるのが人気の秘密。繁華街という便利な立地と、赤と白のモダンな建物のカジュアルな雰囲気も人気を後押ししている。

山盛りのスイーツが目の前に並ぶ Konstantinidis

アテネに11店舗を展開するKonstantinidisも老舗だ(持ち帰りのみ)。コンスタンティニディスさんが、トルコのイスタンブールがコンスタンティノープルと呼ばれていた時代に菓子店を開き、その後、息子たちがギリシャで開業した。フランスで学んだ経験も生かし、フランス菓子も手掛けており、中でもミルフィーユ(独自のレシピ)が有名。深紅の外観が、この店の目印だ。私が訪れた店舗では、ガラス天板のテーブルの中にたくさんのお菓子が並べられ、眺めることができた。テーブルの上にはドーム型の透明ケースがいくつも置かれていた。

この店では、ギリシャでクリスマスの定番といわれるお菓子2種を買ってみた。『クラビエデス』は、真っ白いフワフワの粉砂糖で飾られた雪玉のようなアーモンドのクッキー(色々な形がある)。サクサク、ホロホロした食感で、2,3個食べたくなってしまうかも。『メロマカロナ』は、シナモン、ナツメグ、オレンジジュース、タイムの花から採取したハチミツ、クルミが絶妙に絡み合ったクッキーだ。

特別なヨーグルトを味わう Stani

Staniは、アテネに残る最後の乳製品専門店だという。ここの自慢は、ペロポネソス半島産のハチミツをたっぷりかけクルミをトッピングした、新鮮な羊乳で作られたヨーグルト。朝早くから開いていて私はこの一品を朝食にしたが、確かに普通のギリシャヨーグルトとは一線を画し、まろやかで絶品だった。屋外席もあり、人でいっぱいだった。

Staniではガラクトブレコ(焼いた後にシロップをかけたカスタードクリームのパイ)、先に挙げたカタイフィ(カタイファキ)なども人気。パッケージ入りのヨーグルトを買いに来た人もいた。

ギリシャのパイ+スイーツを楽しむ Fillo

スイーツショップではないが、ギリシャ風パイを豊富に取り揃えたFilloは朝食や昼食に最適。オーガニックのパイもある。ホウレン草、トマト、ズッキーニ、ネギ、ハム、マッシュルーム、チーズ、フェタチーズ、チキンなどの風味で、全国からレシピを集めたそう。アップルパイ、ハチミツ&ヨーグルトなどのスイーツもあるので、パイと組み合わせてみてはいかが。コーヒーもおいしいと評判だ。(サイトには以前の所在地が表示されているが、2023年春に、写真のVoulis 11, Athinaに移転した)


Photos by Satomi Iwasawa

岩澤里美
ライター、エッセイスト | スイス・チューリヒ(ドイツ語圏)在住。
イギリスの大学院で学び、2001年にチーズとアルプスの現在の地へ。
共同通信のチューリヒ通信員として活動したのち、フリーランスで執筆を始める。
ヨーロッパ各地での取材を続け、ファーストクラス機内誌、ビジネス系雑誌/サイト、旬のカルチャーをとらえたサイトなどで連載多数。
おうちごはん好きな家族のために料理にも励んでいる。
HP https://www.satomi-iwasawa.com/