オスマン帝国(オスマン・トルコ)はどのくらい存在していたのかと改めて確認してみると、1299年から1922年というからなんと600年以上。トルコ民族はもともと中央アジア出身で、ヨーロッパを侵略し、シリア、エジプトと領土を広げて、その最盛期の16世紀にはバルカン半島から内陸部、黒海とカスピ海、紅海沿岸までに達し、世界最大の国土を誇った。その後は徐々に衰退して、第一次世界大戦で敗北し、トルコ革命の結果消滅し、トルコ共和国が生まれた。

現在のトルコ国内には、そんな歴史を感じられる遺跡が点在している。また、文化的な遺跡以外にも自然が創り出した美しい景観も様々だ。今回の記事ではトルコの絶景と、朝食の定番「メネメン」のレシピを紹介する。

イスタンブールから南下し海峡を渡ってアジアへ

トルコの西の端はヨーロッパ、東の広大な土地はアジアだ。飛行機でイスタンブールに到着した後、そのままヨーロッパ側を車で南下して、ダーダルネス海峡をフェリーで30分ほどをかけて渡りればアナトリア半島だ。そこからさらに東へ。トロイに到着した。

トロイは紀元前3000年頃に生まれ、その後紀元前1世紀から徐々に衰退し廃墟と化したそうで、トロイの遺跡には9層の異なる年代の遺跡が重なっている。「トロイの木馬」は、トロイの王子パリスがギリシャのスパルタ王妃ヘレネをさらってしまい、王妃を奪還するために起きたトロイア戦争で使われた木馬。その中にギリシャ兵が隠れ、王妃の奪還に成功したというのは、ギリシャ神話の一部であり、ホメロスの叙事詩『イーリアス』に関連する物語で語られている。

遺跡を歩けば古代の神話を思いつつ悠久の歴史を感じられる。また、今は遺跡の入り口に木馬が作られて、その中に入ることもできる。

古代都市エフェソスの遺跡に驚く

エーゲ海沿岸に続く避暑地を抜けてセルチェクへ。ここにはエフェソス遺跡がある。古代ギリシャ神話の女神を祀った「エフェソスのアルテミス像」は紀元前550年頃に建設された。この時期にギリシャ神話の神々に関連する遺物が製作され始めたと考えられている。

この遺跡はトロイ遺跡とは異なり、様々な建造物が残っている。世界七不思議の一つとされているアルテミス神殿、オデオン(音楽堂)、セルシウス図書館をはじめとして、長い歴史の中で作られた様々な用途の建物が残っていて驚かされる。

内陸に入り東へ進みパムッカレへ

トルコ南西部のにある自然遺産の「パムッカレ」を訪れた。パムッカレは「石灰棚」。鍾乳石でできたまっ白な台地が日本の棚田のような段々の丘に広がっている絶景だ。ここを訪れたのは夕暮れ時。オレンジ色の陽の光に照らされて一層美しい。石灰棚は温泉水により作られたもので、パムッカレは古代から温泉浴が行われており、療養・保養地としても有名だ。トルコはここも含めて1500以上の源泉池があるそうだ。

古代からこの地に住み人たちがいたそうで、ローマ時代の遺跡が沈む「パムッカレ・テルマル」は現在でも使われている観光客に人気の温泉リゾートだ。7世紀の終わりの地震により崩落した神殿の柱場所に温泉が湧き出たのだという。

奇岩が広がるカッパドキアで熱気球

アナトリア半島の中央部に位置する、四方を山に囲まれた地域がカッパドキアだ。ここには火山活動によってできた凝灰岩が長い年月をかけて風化と浸食を受けて形成された奇岩が広がっている。奇岩の中には今でも住む人たちがいる。奇岩の家を訪れると、電気もガスも使用でき全く現代的な生活が営まれていた。

きのこのような形の岩は、きのこの頭の部分と下の部分の層が異なる土でできているために、浸食の受け方が異なりそのようになったのだそうだ。今でもゆっくりと浸食は進んでいて、将来新たな奇岩も生まれてくるらしい。

地下8層に及ぶ地下都市跡、カイマクル

カッパドキアには、カイマクルという地下都市がある。地下都市全体で約85メートルもの深さがあるといい、その内部の部屋ははまるでアリの巣のように複雑に通路でつながっている。寝室もあれば厨房も、学校やワイナリーまであるのには驚かされる。かつてキリスト教徒がアラブ人からの侵略から逃れるための避難所として使用された歴史もあり、教会もあった。一時は最大で2万人もの人々が隠れ住んでいたそうだ。

様々な歴史遺産と大自然の絶景、人々の独特な生活を見ることができるトルコのアジア側、アナトリア地方はゆっくりと見て回りたい土地だった。

夜明けのカッパドキアで熱気球に乗る

カッパドキアの観光の目玉の一つが、夜明け前に上がる熱気球だ。多い時には200以上の気球が浮かび、地上の奇岩群と共に他にはない絶景となる。

トルコの朝食の定番「メネメン」のレシピ

トルコ料理は、その昔アナトリアに渡ってくる前の羊料理を中心とした食文化に地中海の海産物を利用した料理もあり、オスマン帝国時代にその領土へと広がった。メネメンはトルコの典型的な朝食料理だが、他の地ではシュクシャカ(Shakshuka)と呼ばれることもある。

トマトとたまごが主な材料だが、今回は夏野菜とミントを使って爽やかに仕上げてみた。

材料:(たっぷり2人分または4人分)

・オリーブオイル 大さじ2
・赤玉ねぎ 1個 3㎜位の薄切り
・赤パプリカ 1個 縦に8㎜幅に切る
・ピーマン 2個 縦に8㎜幅に切る
・にんにく 1かけ 粗みじん切り
・唐辛子 1本 輪切り
・砂糖 小さじ1
・オレガノ(乾燥) 小さじ1/2
・パプリカ(粉) 小さじ1
・クミン(粉) 小さじ1/2
・トマト缶 600g ホールの場合は切っておく
・塩、胡椒 各小さじ1/2
・たまご 4個
・ミント 適量

作り方:

フライパンまたはキャストアイロン(鉄鍋)を使う。
1. フライパンにオリーブオイルを入れて中火で温めたら、赤玉ねぎ、赤パプリカ、ピーマン、にんにく、唐辛子を入れて、玉ねぎが透き通るまで炒める。

2. トマトと砂糖、オレガノ、パプリカ、クミンを加えてよく混ぜたら、5分ほど煮詰め、塩・胡椒で味を整える。

3. 表面にくぼみを4つ作り、たまごを割り入れて蓋をして、黄身が半熟になるまで加熱する。(又は、たまごを入れてかき混ぜても良い。)

4. ミントを飾る。

たまごは好みの固さに仕上げてももちろんOKだ。

皿に軽くトーストしたイングリッシュマフィンを置き、メネメンを取り分けてみた。これで約1/4。結局同じ量をお替りして半分食べたが、野菜が主であり、ピリリとした辛さとミントの爽やかさでぺろりといただけた。


All Photos by Atsushi Ishiguro

石黒アツシ

20代でレコード会社で音楽制作を担当した後、渡英して写真・ビジネス・知的財産権を学ぶ。帰国後は著作権管理、音楽制作、ゲーム機のローンチ、動画配信サービス・音楽配信サービスなどエンターテイメント事業のスタートアップ等に携わる。現在は、「フード」をエンターテイメントととらえて、旅・写真・ごはんを切り口に活動する旅するフードフォトグラファー。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現したものを、みんなと一緒に食べることがライフワーク。
HP:http://ganimaly.com/