札幌で冬季オリンピックが開催されたのは1972年のこと。当時建設されたジャンプなどの競技場スポーツ施設はいまでも現役で、大勢の人々が行き交う地下街も地下鉄もこれに合わせて整備された。今年の雪まつりの頃に訪れた札幌は、旧正月中の台湾や香港、シンガポールなどからの中華系の人々が住む国々や、日本よりも暑いアジア諸国から来た日本の寒い冬と雪を楽しみたいという観光客をはじめ、この時期には真夏のオーストラリアから北海道のパウダースノーを楽しもうというスキーヤーで賑わっていた。
今回は他の地域には出店していない、札幌でしか味わうことができないスープカレーの店と、海老出汁を使ったスープカレーのレシピを紹介する。
冬の札幌の目玉「さっぽろ雪まつり」
日が暮れる頃、さっぽろテレビ塔の展望フロアから雪まつりの雪像が並ぶ大通公園を眺める。塔のすぐ下にはカーリングを体験できるコーナーがあり、大通りから遠く先の山肌には、宮の森ジャンプ競技場が見える。
さっぽろ雪祭りは、1950年に地元の中・高校生が大通公園に展示した6つの雪像が初めだったのだそうだ。今年もアニメーションのキャラクターや、話題のスポーツ選手の雪像が並んでいて世相も反映されていて楽しい。目玉となる巨大雪像の一つはドイツ南部のバイエルン州にある「ノイシュヴァンシュタイン城」だ。夜になるとライトアップされて、様々に変化する光に照らし出される。
今年は、第三回となる札幌国際芸術祭が市内の複数の施設で開催されていた。3年に一度開催されるアートのフェスティバルで、前回予定されていた2020年には中止となり今年が3回目を数える。雪祭の大通り会場には、オーストラリアのアーティスト、エネスの「エアーシップオーケストラ」が展示されていた。来場者の動きに呼応して音や光が変化するオブジェだ。
北海道随一の繁華街、すすき野は雪祭の一環の「すすきのアイスワールド2024」の会場になっている。夜の賑わいの中心であるすすき野の通りに、ビールを模したオブジェや、寿司ネタになる魚を閉じ込めた氷柱、アイヌ文化を表した大氷像などいかにも北海道といった60もの氷像が並んでいた。
札幌で生まれたスープカレー
さて、札幌発祥の料理と問われれば「スープカレー」と答える人も多いと思う。スープカレーという名前は1990年代に、札幌の「マジックスパイス」という店が使い始めたそうだが、それ以前にも同様にスープ状のカレーは存在していたとも言われている。それから数十年、現在札幌にあるスープカレーの店は200を数えるという。具、スープ、トッピング、辛さなどを選んで自分好みのスープカレーを注文するが殆どだ。今回はこの旅で訪れた、札幌以外に進出していない3軒のスープカレーを紹介したい。
異次元のスープ「スープカリー yellow」
札幌で唯一高圧窯を使用して取るヴイヨンを使ったスープが唯一無二・異次元のスープと言われているのがすすき野にある「スープカリー yellow」。スープカレーには様々な具が使われるが、鶏肉を使ったものが最初と言われている。また特徴的なのはトッピングの揚げ野菜。そんな典型的なスタイルの「チキン野菜カリー」が人気だという。他にも様々なバリエーションがある。
薬膳効果の Soup Curry Beyond Age
「Soup Curry Beyond Age」は、オーナーの辺さんが札幌で出会ったスパイスカレーに感動して2017年にオープンした店。11種類の生薬、15種類のスパイスに香味野菜を等を煮込んだスープのベースは体に優しい。カレースパイスにはアンチエイジング効果がある白きくらげを加えているという。写真は「ラムベジ」(羊と野菜)のカレーに「濃厚スープ」、トッピングに北海道の伝統料理である芋餅を追加したもの。シッカリ濃厚で奥深い味わいだ。
日替わりのメニューとトッピング
典型的なスープカレーもいいが、何か面白いものはないかと挑戦してみるのならおすすめなのが「カリー乃 五〇堂」だ。この店は日替わりが楽しい店で、訪れた日は「帆立と茄子」。おでんの具のような大きく切った大根の煮物と炒めたニラもトッピングに追加した。ボリュームたっぷり、意外な具のコンビネーションも楽しめる。
それにしても札幌のスープカレーはとても自由なのだ。それぞれの店が趣向を凝らして独自の味を追求している。
海老の出汁を使ったスープカレーのレシピ
今回紹介するレシピのポイントは海老の殻から取る出汁だ。少し手間はかかるがその分旨くなる。海老の出汁を使ったスープカレーは「奥芝商店」のものが有名で、こちらは都内にも支店がある。煮込む野菜は基本のじゃがいも、にんじん、玉ねぎ。素揚げした好みの野菜をトッピングしてみる。ご飯は黄色のターメリックライスにしよう。
主な材料は海老、鶏手羽中肉、野菜
海老出汁をとる
材料:
・甘海老、赤エビなどの有頭海老 250g 殻を外しておく
・植物油 大さじ1/2
・水 200ml
・塩 小さじ1
濃厚な赤い出汁がとれる。海老の身は使わないので刺身で別途いただく。
1. フライパンを中火で熱して植物油を引き、有頭海老の殻(頭部と味噌も)を入れて全体に油を回したら、全体に塩を振る。時々返しながら、殻の水分が飛んで濃い赤色になるまで5分ほど返しながら炒める。
2. 1に水を加えて弱火で10分茹でる。
3. 3を、麺棒などでつぶすようにして、ざるやシノワ等で濾す。
スープカレーとトッピングの具
かぼちゃ、にんじん、なす、れんこん、オクラなどをトッピングに用意する。
材料:
・鶏手羽中 6本 骨に沿って切れ目を入れておく
・玉ねぎ 100g みじん切り
・にんにく 大さじ1 みじん切り
・しょうが 大さじ1 みじん切り
・カレー粉 大さじ2
・じゃがいも 中1個 2つに切る
・にんじん 中1/2本 4つに切る
・しょうゆ 大さじ1
・塩 小さじ1
・エビ出汁 200ml
・鶏がらスープ 200ml
・トマトジュース 200ml
・蜂蜜 大さじ1
・植物油 大さじ1
・季節の野菜 適量 かぼちゃ、にんじん、なす、れんこん、オクラなど
・ターメリックごはん 1.5合分 ターメリック小さじ1/2入れて炊いておく。
作り方:
1. 厚手の鍋を中火にかけて植物油を温め、玉ねぎ、にんにく、しょうがを入れて、一通り油が回ったら弱火にして、玉ねぎが黄色に色づくまでゆっくり炒める。
2. カレー粉を加えて全体に合わせて香りが出たら、鶏手羽中肉を入れて、鶏手羽中肉の表面の色が変わるまで炒める。
3. エビ出汁、鶏がらスープ、トマトジュース、醤油、蜂蜜を加えて中火で沸騰させたら15分煮込む。
4. じゃがいもとにんじんを、電子レンジ600wで12分加熱する。
5. 季節の野菜は素揚げにしておく。フライパンに2㎝位の油(適宜)をいれて180度に熱して火が通るまで揚げる。唐辛子やしし唐などは、切れ目を入れて爆発を防ぐこと。
6. 3にじゃがいもとにんじんを入れて1分煮る。
7. 器に6を注いで具を入れて、揚げた野菜を飾り、別の器にご飯を盛る。
野菜は揚げずに、電子レンジで調理してもおいしくいただける。その場合には、今回の分量1人前であれば600wで5分程度加熱する。
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All Photos by Atsushi Ishiguro
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石黒アツシ
20代でレコード会社で音楽制作を担当した後、渡英して写真・ビジネス・知的財産権を学ぶ。帰国後は著作権管理、音楽制作、ゲーム機のローンチ、動画配信サービス・音楽配信サービスなどエンターテイメント事業のスタートアップ等に携わる。現在は、「フード」をエンターテイメントととらえて、旅・写真・ごはんを切り口に活動する旅するフードフォトグラファー。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現したものを、みんなと一緒に食べることがライフワーク。
HP:http://ganimaly.com/