ニュージーランドの最大都市である北島のオークランドと、首都のウェリントン。どちらも主要スポットは徒歩で訪れることができるコンパクトな都市で、短時間でアーバンランドスケープを存分に楽しめることができる。今回の記事ではこの2つの都市のおすすめスポットをいくつか紹介する。

大都会と自然が混在する街、オークランド

オークランドの人口は約170万人でニュージランドの人口の30%を占める。その都心部は、オフィスビルやアパート、ホテルなどが混在し、景観としては少し美しさに欠ける部分もあるが、中心部を離れればすぐに都会のオアシスが見つかる。

たとえば市内で一番広い公園がオークランド・ドメイン(Auckland Domain)。1880年にパブリック・リザーブとして確保されたこの土地面積は200エーカー(0.8平方キロメートル)。約14万年前の火山活動によって形成された地形がそのまま活用されており、いくつかのトレッキングルートがある。公園内の一番高い丘の上にはオークランド戦争記念博物館(Auckland War Memorial Museum)が立つ。同博物館は、戦争記念博物館という名前がついてはいるが、原住民のマオリ族の文化や恐竜の骨などの自然史に関連する多様な展示物を見ることができる。

オークランド戦争記念博物館(Auckland War Memorial Museum)

オークランド中心部には高層ビルが立ち並び、高さ328メートルのランドマークであるスカイタワーが目を引く。スカイタワーの地上186メートルの高さにある展望台からは、天気が良ければ80キロメートルの距離まで見渡せる360度のパノラマの絶景が楽しめる。さらに192メートルの場所からのバンジージャンプや、地上192メートルの場所に設けられた幅1.2メートルのプラットフォーム上を歩いて景色を満喫するというアドベンチャーな選択肢もある。

市内でパノラマの景色を味わえるもう一つの場所がマウント・エデン。マウント(山)という名前がついているが標高は196メートルと低く、緩やかな傾斜の道を上って簡単に山頂に行き着くことができる。山頂部分は広く、クレーターの大きな窪みがあるのも特徴的である。山頂からはオークランドのスカイラインが見渡せて、日の出や日の入りの空を眺めるスポットとしても人気が高い。全長2.1キロメートルのループ上のトレイルがあり、ジョギングやウォーキングにもいい。

車がなくても都心から気軽に訪れることができる郊外の人気スポットがワイヘケ島。オークランドのダウンタウンからフェリーに乗って40分でたどり着くことができる。ワイヘケ島の面積は92平方キロメートルで東京都の大島ぐらいのサイズ。島はランドスケープやワイナリーで知られる観光地で、乗り降り自由の観光バス(Hop-on Hop-off Explorer Bus)を使ってマイペースで各所を訪問することができる。フェリーは頻繁に運行しているため、オークランドからの日帰り旅行がおすすめだ。

ワイヘケ島ワイナリー ©︎Camilla Rutherford

カルチャーを感じる場所、ウェリントン

首都のウェリントンは行政の中心地であると同時に、独特のカルチャーを感じることができる都市だ。都市の面積はオークランドの約4割で、その人口も約42万人とオークランドの4分の1。北島の南端に位置するこの都市は、オークランドと同様に海沿いに展開しているが、ウェリントンの方がウォーターフロントの景観がより整備されている印象だ。ウォーターフロントからは、湾の対岸の住宅地区であるイーストボルン行き、および南島のピクトン行きの各フェリーが運行する。ウェリントンとピクトンの間は、約100キロメートル、フェリーで約3時間半の距離だ。

ウェリントンの人気スポットの一つであるテ・アロ地区は、クリエイティブな空間でデザインショップやおしゃれな内装のレストランやバーなどが並ぶ。テ・アロ地区を代表する場所が、歩行者天国の商業ストリートであるキューバ・ストリート。キューバ・ストリートはカラフルでファンキーな雰囲気が漂う空間で、ヴィンテージ・ショップも多い。カラフルなバケツが使われた噴水のオブジェは、キューバ・ストリートのアイコン的な存在だ。ユニークなショップフロントや虹色の横断歩道があったり、ストリート・ミュージシャンが演奏したりしていて、ヒッピーな空間でもある。キューバ・ストリート以外にも、壁画や彫刻があったりして、ウェリントンの街並みは全体的にファンキーな印象だ。

ウェリントンはノマドワークできるスポットも充実している。市内にある公立図書館は市民でなくても利用することができる。公立図書館の一つであるTe Awe Libraryはアクセスもよく、電源やWiFiを自由に使うことができ、ワークスペースやミーティングルームが整備され、カフェも併設。もちろん本や雑誌を自由に閲覧することもできるし、レコードまで収蔵している。また、市内にはクラフト系のコーヒーショップや、クラフトビールの醸造所もあり、コーヒーやビールを飲みながらパソコンに向かうという選択肢もある。

Fortune Favours Wellingtonでのビールのテイスティング

そしてウォーターフロントは、テラス席のあるレストランやバーなどが立ち並び、海沿いの遊歩道も整備されている。マオリ民族の工芸品を扱ったギフトショップなどもあり、観光地の雰囲気が漂う。ウォーターフロントのランドマークの一つがニュージーランド国立博物館(テ・パパ・トンガレワ)で、絵画からマオリ民族に関連した工芸品や文化品などが収蔵されている充実した博物館だ。マオリ語の名称、テ・パパ・トンガレワは宝箱(宝の入れ物)という意味だが、博物館はまさにニュージーランドの文化的な宝に触れることができる空間だ。

ニュージーランド国立博物館(テ・パパ・トンガレワ)

ビーチやグリーンスポット巡りも

博物館のある場所からさらに海岸沿いを北上すると、オリエンタル・ビーチに到達する。オリエンタル・ビーチは都心から最も近いビーチとして、地元の人にも人気がある。ウェリントンは強風で知られており、それが街のブランドアイデンティティの一部としてロゴやデザイン画などのビジュアルに使われたりするぐらいなので、海岸沿いを散策する際にはウィンドブレーカーが重宝する。
 
ビーチがあるオリエンタル・ベイから、市を一望できるマウント・ビクトリアの山頂に向かうというのが、地元のカフェ店員が提案してくれたおすすめのウォーキングルートだ。天気が良ければ街を360度見渡せる。山頂の高さは196メートル。オリエンタル・ベイからのループは全長4.8キロメートルで、1時間半ほどあれば回れる距離だ。雨が降った直後は地面がぬかるむため、ハイキングシューズが推奨される。

Mt Victoria Panorama ©️Johnny Hendrikus

市内のもう一つの憩いの場がウェリントン・ボタニック・ガーデン。ダウンタウンから少し高くなった場所に位置し、趣ある赤いケーブルカーを利用してアクセスすることも可能。庭園内は巨大なツリーハウスがあったり、色とりどりのバラが鑑賞できるローズ・ガーデンがあったり、プラネタリウムがあったりと、1人でも、カップルでも、家族連れでも楽しめる場所だ。

ウェリントンは、2011年にロンリー・プラネットが「世界一クールで小さくかわいらしい首都」と評価した街だが、10年以上経った今でもその表現はふさわしいと感じられる。欧州の小さな都市のような雰囲気と、アメリカの都市のような開放的でモダンな雰囲気が交わり、かつアジアからの移民も多いためアジア的な要素もあって、グローバルでコスモポリタンな空間を形成している。東南アジアの都市などと比べて物価は安くないが、北半球の訪問者が冬の時期に長期滞在する地としてのポテンシャルは高い。こぢんまりとした中に魅力が詰まったウェリントンは、大都会は苦手だがアーバンカルチャーに触れたいという人にとっても最高の場所かもしれない。


All Photos by Maki Nakata

Maki Nakata

Asian Afrofuturist
アフリカ視点の発信とアドバイザリーを行う。アフリカ・欧州を中心に世界各都市を訪問し、主にクリエイティブ業界の取材、協業、コンセプトデザインなども手がける。『WIRED』日本版、『NEUT』『AXIS』『Forbes Japan』『Business Insider Japan』『Nataal』などで執筆を行う。IG: @maki8383