あらためてハンガリーの地図を眺めてみると、その国土は北から時計回りに、スロバキア、ウクライナ、ルーマニア、そして南にセルビア、そこから北へとクロアチア、スロベニア、オーストリアと、7か国に地続きで囲まれている。首都ブダペストの人口は167万人の東欧・西欧の最大都市の一つだ。

今回は、ブダペストの街並みとブダペスト中央市場「Nagycsarnok(ナジチャルノク)」とそこで食べた「Töltött paprika(トルテット・パプリカ)」のレシピを紹介したい。

列車で巡りたい中欧の旅

ブダペストを訪れたのは2016年の5月。この時期の平均最高気温は22℃、最低気温は12℃と、東京と比較するとまだまだ涼しい。

スロバキアのブラチスラヴァからブダペスト西駅に到着すると、重厚でかつ整然とし、歴史を感じさせる建造に圧倒された。ブダペストには主要駅が3つあり、それぞれが起点となっているターミナル駅だ。

ブダペストの街は、ドナウ川西岸のブダ地区と東岸のペスト地区に広がるかなり広いエリアだ。地図を見てどこにでも歩けるように思えるのだが、歩いてみると意外に距離があって驚くこともある。

市街中心からセーチェーニ温泉へと徒歩で出かけると、1時間近くかかった。後で聞いてみると地下鉄を利用するのが便利なのだそうだ。屋内には温度の違う温泉がいくつかあり、屋外にもプールのような温泉がある。趣のある鄙びた温泉ではなく、日本の健康ランドやレジャー・プールでもあるようで、ワイワイと楽しい。市内に点在する古くからの温泉施設はオスマントルコの支配下にあった16世紀から17世紀に造られたものだ。

ブダペストの街並みを楽しむ

ブダペストの地は、2世紀初めにローマ人が住み始めたのち、1000年にはハンガリー王国が成立。1240年にはモンゴル帝国の侵攻を受けた。その後16世紀ころにはオスマン帝国の脅威にさらされており、オスマン帝国領ハンガリーとなった。

その後、ハプスブルク家が350年に渡って統治したのち、いくつかの経緯を経て1946年には王位制が廃止されてハンガリー共和国が成立した。しかしすぐにソビエト連坊の占領下におかれ共産化が進んだ。現在のハンガリー共和国が成立したのは1989年だった。

ブダペストには、東ヨーロッパ地域の他の国や都市のように、ローマ帝国、オスマン帝国、ソビエト連邦といった3つの外圧にさらされた。また、友好的ではあったがハプスブルグ家による支配の時代も長く、様々な文化の影響を受けてきた歴史がある。

そんなことを思いながらブダペストの街を歩く。現在の建物は19世紀以降のものがほとんどだが、ネオ・ゴシックの様式の街並みや、美術館などのアール・ヌーボーのテイストも見ることができる。

ブダペスト中央市場の賑わいとピラフ詰めのパプリカ

1897年に建てられたブダペスト中央市場は、ネオ・ゴシック様式の屋内型市場。美しく重厚な造りの建物は、ホールの広さにも圧倒させられる。この時期、春ならではのアスパラガスなどの新鮮な野菜や、数種類のキャベツに大根に人参と、日本でもなじみのある野菜も売られていた。そしてEUの他国から輸送された果物などの生鮮食品も並んでいる。

食肉、豚肉の燻製やハムといった加工肉、鹿のジビエ、サーモンやキャビアといった水産物などの店も並び、手に入らないものはないような豊富な品揃えだ。

ハンガリーの名産と言えばフォアグラ、キャビア、そしてパプリカだ。野菜を売る店には、壁いっぱいにパプリカが干されていたり、パプリカを粉にしたもの、ペーストにしたものなども売られている。

2階には生活必需品の店と食堂がある。パン屋ではポガーチャというハンガリーのおつまみパンが売っている。パンケーキ、ドーナツなどを売るスィーツ店もあった。デリカテッセンのケースの中には様々な料理が並んでいるが、そこで気になったのがパプリカにピラフを詰めてチーズをのせて焼いた「Töltött Paprika(トルテット・パプリカ)」だ。

「Töltött Paprika(トルテット・パプリカ)」レシピ

この料理の作り方はとてもシンプルで、まずはピラフを炊き、それをパプリカに詰めてチーズをのせてオーブンで焼くだけだ。今回のレシピではピラフは炊飯器で炊くが、その時間を抜けば30分ほどで完成する。

材料:2人分
・パプリカ 2個
・米 1合
・オリーブオイル 大さじ1
・にんにく 1かけ
・鶏ひき肉 120g
・玉ねぎ(粗みじん切り) 1/4個
・にんじん(粗みじん切り) 1/4本
・タイム 小さじ1/4
・塩 小さじ1/4
・こしょう 小さじ1/4
・チリパウダー 小さじ1/4
・トマトピューレー 大さじ2
・トマトケチャップ 大さじ1
・ピザ用のチーズ 80g

※ピラフは1合で炊き、実際に使うのは半量程度。パプリカを2個追加して4つ作っても良いし、後日そのまま食べても良い。

作り方:

1. パプリカの頭の部分を落とす。あとでふたのよう使うので取っておく。中の種と柔らかく白い部分を、ナイフを内側に入れて外して取り除く。パプリカの下の部分は、ナイフで1㎜ほど切り落として平らにして自立するようにする。

2. フライパンにオリーブオイル大さじ1/2とニンニクを入れて弱火で温め、香りが出たら米を入れ、コメ全体に透明度が出るまで油を回してから取り出しておく。

3. 同じフライパンにオリーブオイル大さじ1/2を入れて熱し、鶏ひき肉、玉ねぎ、にんじん、タイムを入れて炒める。全体に火が通ったら塩・胡椒、チリパウダーを加えて全体に混ぜ合わせたら火を止める。

4. 炊飯器に2の米を入れる。2合の水加減をして、トマトピューレー、トマトケチャップを入れて軽く混ぜて、上に3の炒めた具を入れて炊く。(早炊きコースで構わない)

5. オーブンを230度で予熱しておく。
6. 炊飯が終わったら全体をざっくりと混ぜ、パプリカひとつに縁から3㎜程度まで、ギュッと押しながら入れる。
7. パプリカをオーブンの天板の上に並べて、それぞれの上に山盛りになるようにピザ用チーズをのせる。外した頭の部分も、茎を上になるようにして並べておく。

8. オーブンに入れて12分から15分焼く。


All Photos by Atsushi Ishiguro

石黒アツシ

20代でレコード会社で音楽制作を担当した後、渡英して写真・ビジネス・知的財産権を学ぶ。帰国後は著作権管理、音楽制作、ゲーム機のローンチ、動画配信サービス・音楽配信サービスなどエンターテイメント事業のスタートアップ等に携わる。現在は、「フード」をエンターテイメントととらえて、旅・写真・ごはんを切り口に活動する旅するフードフォトグラファー。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現したものを、みんなと一緒に食べることがライフワーク。
HP:http://ganimaly.com/