パリの初夏は、いよいよ強くなり始めた太陽の光に生き生きと照らし出される街の風景が特に美しい時期だ。パリを東西に流れるセーヌ川の北側、2区、3区、10区のあたりを、午後から夕暮れまで歩き、ストリートマーケットを訪れた。今回は簡単で美味しいフランスのお惣菜ケーキ「ケイクサレ」のレシピを紹介する。

グラフィティ、花が咲き誇るカフェ、近未来的なショッピングモール

パリの街並みと言えば、古くからの建物が立ち並び、しっとりとした趣のある雰囲気というのが一般的な印象かもしれない。確かに歴史と伝統を重んじて文化財を大切に扱うという姿勢は大切にされている。一方、新しいものも取り入れる余裕があるのもパリの魅力の一つかもしれない。

グラフィティといえばアメリカの文化というイメージが強いが、パリの中心部にも刺激的なグラフィティが点在している。その一つがポンピドゥセンターそばのストラヴィンスキー広場に面している建物の壁。この壁にはフランスを代表するステインシル・グラフィティ・アーティストのジャン・フランソワ・ぺロワ(通称ジェフ・アエロソル)の「Chuuuttt!!!」という作品が描かれている。男性が指を唇にあてている巨大なARTは、見るものに周りの音に注意を払ってみるように促しているのだという。

少し西側に位置するベルヴィル地区(Belleville)はストリートアートの新しい発信源にもなっており、歩いて作品を巡るツアーなども開催されている。新しいパリの姿をグラフィティと共に楽しむのもまた発見に満ちている。

この時期のパリで目を奪われるのがカフェやレストランのエクステリアを彩る花々だ。ストラヴィンスキー広場から少しだけ東に歩いたコーナーにテーブルが並ぶカフェ、Le Bon Pechurの外観は様々な色の花に包まれていて美しい。

もう少し東に歩くと、レ・アル地区の中心に位置するサン・ウスタッシュ教会のそばにひときわ目にまぶしく飛び込んでくるのがレストランFloridaだ。深紅の花が外壁を覆い、強い日差しの下で独特の雰囲気を醸し出していた。

上の写真は2016年に、パトリック・バーガーとジャッキー・アンズイエッティのデザインにより完成した「La Canopée」と呼ばれるこの大屋根だ。この下には、2010年にオープンしたWestfield Forum des Hallesというショッピングモールがある。

ここは1973年まで生鮮食品の市場があった場所で、その後一度再開発されたもののガラスと金属の建物が住民の反感を買い、無軌道な若者が集まるようになったのだという。現在は地下5階までににシアター、ミュージアム、飲食店、ショップ、銀行などが入っているコンプレックスで、住民にも旅行客にも人気だという。新しく斬新なデザインは、歴史ある街にも溶け込む姿は不思議な美しさがある。

夕方になってサン・マルタン運河へ足を延ばすと、夕暮れに落ちてゆく太陽の光を惜しむように人々が集まっていた。この辺りには個性的なカフェやブティックが多く、「Bobo」と呼ばれる先端的な若い世代に人気のエリア。Bourgeois Bohème/Bohémien、中産階級の自由人という意味なのだそうだ。

さて、初夏のパリはあちこちの公園にピクニックに出かける人も多い。簡単に作ることができて、屋外でもつまみやすい「Cake Saléケイクサレ」、塩味のケーキのレシピを紹介する。朝食やランチ、アペロ、もちろんお酒のつまみにもぴったりだ。

材料を混ぜてオーブンで焼くだけ!ケイクサレ

ケーキと聞けば甘いお菓子を思い浮かべるが、ケイクサレはお惣菜系のケーキだ。サレは「塩」の意味。具には野菜、肉、チーズなどを入れる。今回は、チーズ、ハム、ドライトマト、ベーコン、ピーマン、オリーブを入れてみたが、自由な発想で好みの具を使ってももちろん大丈夫。パウンド型に材料混ぜたものを流し込んで、オーブンで45分程焼くだけなので、準備からでも1時間あれば完成する。

材料:

・小麦粉(薄力粉) 200g
・ベイキングパウダー 小さじ2
・たまご 3つ
・オリーブオイル 60ml
・牛乳 120ml
・塩・こしょう 少々
・ドライトマト 15g
・オリーブ 25g
・ベーコン 80g
・ドライバジル 小さじ1
・ピーマン 1個

作り方:

1. オーブンを180度に温めておく。
2. 材料の具は粗みじんに切っておく。

3. ボールに、小麦粉、ベイキングパウダーを入れ、泡だて器でよく混ぜ流。そこにオイル、たまごを入れてよく混ぜて、牛乳、塩・こしょう各一つまみを加え、さらに混ぜる。

4. 具を加えて全体を合わせたら、容器に入れて、40分から45分オーブンで焼く。爪楊枝を指して透明な液体が出たら出来上がり。

さて、今回散策したエリアにはデリカテッセンや食材店、調理道具の店もいくつかあって面白い。下はComptoir de la Gastronomieという肉屋とワイン店、そのほかの食材を売る店で、左側にはTrouble Obssessionnel Culinaireという調理道具の店だ。日本では目にしない食材や調理道具を見て歩くのも楽しい。


All Photos by Atsushi Ishiguro

石黒アツシ

20代でレコード会社で音楽制作を担当した後、渡英して写真・ビジネス・知的財産権を学ぶ。帰国後は著作権管理、音楽制作、ゲーム機のローンチ、動画配信サービス・音楽配信サービスなどエンターテイメント事業のスタートアップ等に携わる。現在は、「フード」をエンターテイメントととらえて、旅・写真・ごはんを切り口に活動する旅するフードフォトグラファー。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現したものを、みんなと一緒に食べることがライフワーク。
HP:http://ganimaly.com/