台北の街を歩いていると目に入る「蚵仔煎」という文字。ちょっとした食堂だったり、市場の屋台のメニューで見かけた。「蚵仔」は牡蠣、「煎」は少量の油を使って表面に焼き色がつくように焼いたものを意味するので、「牡蠣のオムレツ」と訳されていることの多いこの料理、なかなか旨い。

蚵仔煎は台湾の大衆グルメの一つで、家庭でもよく作られるという。今回はこの「蚵仔煎」のレシピを紹介したい。台湾を旅して食べたことがある人も多いと思うが、自分で作ればまた格別。牡蠣が手に入りやすいこの時期におすすめだ。そして、台湾の人たちの胃袋を日常的に満足させる「夜市」の写真で、雰囲気を味わってもらえたらと思う。そろそろ、台湾旅行の計画を立てたくなるかもしれない。

「寧夏市場」で地元の食と暮らしを知る

ある程度の人口がある台湾の街に、必ずと言っていいほどあるのが「夜市」。毎晩夕方になると屋台が並び始め、夜遅くまで地元の人たちがやって来ては屋台の料理を楽しんだり自宅へ持ち帰ったり、簡単な日用品を買ったりして賑やかだ。夜市にもいろいろあって、台北の北部にある士林夜市のように常設のものや台南の花園夜市のように曜日限定で開催されるものもある。

今回の旅(2023年2月)で訪れたのは「寧夏夜市」。台北駅の北側に位置する大同区にある。この辺りは台北の中でも早い時期から開発されていた地域で、中華料理食材や漢方などを売る店、道具店、新しいカフェやクラフトを売る店などが並ぶ「迪化街」が有名だ。そのそばにあるのが寧夏夜市。車両も入る道が、夕方からは夜市になる。

「寧夏夜市」で食べ歩き

150mほどの通りの中央部を空けて、両側に幅が1m50㎝ほどの屋台がずらりと並ぶ。屋台のそばに簡易なテーブルが用意されている店もある。ここは食べ物が中心の夜市で、そのグルメ度は高いと言われている。士林や桃園の夜市と比較すれば規模は小さいが、地元の人たちに日常的に使われてきた雰囲気があってアットホームだ。

串焼きの露店では、小学生くらいの子供が一人で串を選んでいた。肉や練り物、野菜などを串に刺したものをその場で焼いてくれる。背中には教科書が入っていそうなリュックをしょって、慣れた様子で注文していた。

台湾の甘みがある腸詰を焼き、薄く焼いた粉のクレープ状の「餅」にくるんだものを買って食べ歩いた。さまざまな屋台を覗きながらのんびりと楽しい時間だ。しぼりたてのサトウキビジュースを飲んでみると、ほんのりとした甘さが美味しい。台湾には独特の時間が流れているように感じる。
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「蚵仔煎」の人気店で出来立ての熱々を

寧夏市場には路面店もある。その中のひとつが蚵仔煎で人気の「蚵仔煎大王」だ。入り口にはテイクアウトと店内飲食の列がある。運よく5分程で席に着くことができた。それにしても、黄色の背景に筆で描いたような赤い文字。このセンスには気迫が感じられる。

店の入り口すぐ横に直径1mほどの鉄板があって、蚵仔煎がいくつも焼かれている。そのすぐ後ろには料理の下準備や調理、配膳の準備をするテーブルがあって、店員たちが忙しく働いている。

皿に乗せられて運ばれてきた蚵仔煎には、オレンジ色のソースがたっぷりとかけられていた。箸で崩してみると、小さめのサイズの牡蠣がいくつも入っていて、レタスと玉ねぎも入っている。口にすると、たまごには片栗粉でプルンとした食感がプラスされている。ソースはケチャップをベースにしたトマトソースで、酸味が効いていてよく合う。ビールを一缶。「あぁ、こういうもので満たされるっていいな」と思わせる。

レシピ|蚵仔煎(オアチェン) 台湾の牡蠣オムレツ

画像は一人分。一人分ずつを作る。たまご2個でも、片栗粉を加えるのでこのボリュームになる。今回はレタスを使うが、小松菜や青梗菜などでもよい。

材料:2人分
・たまご 4個
・かき 10粒
・片栗粉 大さじ1
・塩・白胡椒 各ひとつまみ
・植物油またはピーナッツオイル 大さじ2
・水 100ml
・レタス 60g(約2枚)
・玉ねぎ 1/4個

<ソース>
・ケチャップ 大さじ3
・酢 大さじ3
・砂糖 大さじ1
・しょうゆ 小さじ1
・片栗粉 小さじ1
・水 80ml

下準備:
熱々を食べたいので、あらかじめ材料を準備しておく。

• 牡蠣はボールに入れて片栗粉(分量外)をまぶして少量の水加え、流水で洗って汚れを取り、ざるにあげる。

• レタスは1cm幅5cm長くらいに切る。
• 玉ねぎは荒みじん切りにする。
• 片栗粉大さじ1を水100mlに入れて溶かしておく。
• ボールに卵を割って、塩・こしょうを加えてよく混ぜる。

作り方:

1. ソースの材料を合わせて鍋に入れかき混ぜながら温めて、沸騰したら火を止める。

2. フライパンを強火にかけて、植物油またはピーナッツオイルを大さじ1入れて熱してから中火にし、牡蠣を5つ入れて表面が硬くなり中に火が通るまで、1分ほど返しながら炒める。

3. 中火のまま、片栗粉液の半量をフライパンに入れて沸騰したら、卵液の半量を入れて、固まってきたら箸で中央に集めるように回しながら、丸く形を整える。

4. レタス半量を乗せておき、焼き面に焼き色がついたらフライ返しでひっくり返す。

5. 焼き色がついたら、皿に盛ってソースの半量をかける。

いい色に焼き色を付けると美味しさが際立つが、焦げには注意。酸味が苦手な場合には酢の量を減らしてその分を水に変えるても良い。


All Photos by Atsushi Ishiguro

石黒アツシ

20代でレコード会社で音楽制作を担当した後、渡英して写真・ビジネス・知的財産権を学ぶ。帰国後は著作権管理、音楽制作、ゲーム機のローンチ、動画配信サービス・音楽配信サービスなどエンターテイメント事業のスタートアップ等に携わる。現在は、「フード」をエンターテイメントととらえて、旅・写真・ごはんを切り口に活動する旅するフードフォトグラファー。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現したものを、みんなと一緒に食べることがライフワーク。
HP:http://ganimaly.com/